赤髪連盟(シャーロックホームズ)のネタバレ解説・あらすじ・感想
アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ『赤髪連盟』(他の訳:赤髪組合、赤毛連盟、赤毛組合、赤毛クラブ)。この物語は、赤毛の人だけを集めた連盟が突如解散した謎を追う、『シャーロック・ホームズの冒険』に収録されている短編小説です。
そこでこのページでは、本作品の真相などの解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。
物語について
解説する前に、登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。
登場人物
『赤髪連盟』の登場人物は以下です。
登場人物名 | 説明 |
---|---|
シャーロック・ホームズ | 私立探偵 |
ジョン・H・ワトスン | 医師 |
ジェイベズ・ウィルスン | 質屋の店主 |
ヴィンセント・スポールディング | 質屋の従業員 |
ダンカン・ロス | 赤髪連盟の組合員 |
ピーター・ジョーンズ | スコットランドヤードの警部 |
メリーウェザー | 銀行の頭取 |
あらすじ
ワトスンがベーカー街のアパートに立ち寄ると、ホームズは燃えるような赤い髪を持つジェイベズ・ウィルスンと対談中だった。質屋で雇っている店員に勧められて片手間に始めた赤髪連盟の仕事で、困ったことになっているという。
赤髪連盟の仕事は一日四時間、大英百科事典の写しをするだけで週に四ポンドという美味しい話。ところが二ヵ月経った今、急に解散したという張り紙が出されたため、ウィルスンは途方に暮れていたのだった。
解説と考察
それでは本物語の解説と考察に移ります。
赤髪連盟とは何だったのか
赤髪連盟という組織を作った目的は、ジェイベズ・ウィルスンを家から遠ざけるためでした。なぜそんなことをする必要があったのか。それは、次の流れで実行するとんでもない計画を推し進めていたからでした。
- 従業員としてスポールディング(ジョン・クレー)が質屋に潜入
- 赤髪連盟の仕事をさせてウィルスンに家を空けさせる
- ウィルスンがいない間に銀行までのトンネルを掘り進める
- トンネルから銀行に侵入して保管されているナポレオン金貨を強奪
赤髪連盟の解散理由は、二ヵ月経ってトンネルが完成したため。完成したらウィルスンを家から遠ざける必要もないですし、発見されないうちに一刻も早く実行しなければなりません。
しかし「半分の給金で良い」というスポールディングの怪しさを皮切りにして、ホームズはクレーたちの壮大な計画を見抜きます。クレーが膝を汚したままホームズを応対してしまったのは、少し不用意でしたね。
ウィルスンの性格や生活習慣
ウィルスンが赤髪の持ち主だということ以外にも、クレーは以下の性格や生活習慣などの人間的特徴を利用しています。
- ケチ臭い性格
- 独り身
- 出不精
質屋の経営状況もありましたが、半分の給金で良いと申し出てクレーは質屋に潜り込むことに成功します。ウィルスンは独り身で出不精なので、話し相手は従業員だけ。情報を吹き込み自分の思うように誘導させることは容易でしょう。
さらにクレーだけではなくもう一人の人間が辻褄を合わせていることが、余計に信用を強める要因になっています。敢えて言えば、人間の心理面を利用したうまい手。幸いウィルスンが損することはありませんでしたが、利用するにはうってつけの人物だったと言えると思います。
ドラマについて
ジェレミー・ブレットが主役を演じる海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」では、1985年に本物語を放送しました。以下は原作との相違点です。
- ワトスンがウィルスンの肘について指摘する
- ウィルスンがフリーメイソンの一員であるという指摘がない
- ホームズが赤髪連盟の仕事で使う筆記用具が自前なことにケチ臭いという
- ウィルスンは神経が病んで妹の家に行こうとしていた
- ナポレオン金貨が銀行にあることが世間に広まっていなかった
- ウィルスンの質屋がめちゃくちゃにされる
- モリアーティが関与している
いちばん大きな違いはモリアーティの関与。原作ではジョン・クレーとアーチーの二人による計画だったものが、ドラマでは組織が背後にいることとなっています。ただしシャーロック・ホームズの研究者の中では、原作に描かれていないだけでモリアーティが裏に潜んでいたという説がそもそもあるようです。
アーチーを捕らえる際、ウィルスンの質屋がこれでもかってくらい荒らされます。翌朝ワトスンがホームズから預かった伝言は、「人を雇う時はまともな給料を払う事」。うまい話には裏があるのだから、ケチケチせずにいたほうが長い目で見れば安心だという警告を与えます。
感想
まず思ったのは、よくこんな突飛な計画を推理できたなぁということです。長い時間トンネルを掘って銀行に潜入するなんて、どうしたら想像できるでしょうか。ホームズは解明できた要因にスポールディングの存在を挙げていますが、根本は次の理念に基づいていたからだと思います。
一般に事件というものは、不可解であればあるだけ、解釈は容易なものだよ。
出典元:新潮文庫『シャーロック・ホームズの冒険(赤髪組合)』コナン・ドイル/延原謙訳
自分が日本人であることも関係しているかもしれませんが、赤髪の人だけを集めた組織なんて普通じゃない。ウィルスン本人でさえ、「二度とあんな光景が見られようとは思いません」というほどです。赤髪連盟は少し目立ち過ぎたので、もしかしたらウィルスンを遠ざける方法に別の手段を選んだほうが良かったかもしれません。
シャーロキアンの間でも話題になっているようですが、赤髪連盟の広告が出たのと解散した日の間隔が一致しません。この間はわずか二ヵ月のはずですが、広告が出たのが1890年4月27日、解散したのは1890年10月9日となっています。去年の秋の出来事だったため、ワトスンが記録ミスをしたのか。もしそうだとしたら、世に出すホームズの記録なのでもう少し注意を払って欲しかったと思います(ついでに1890年10月9日は土曜日ではなく木曜日)。
少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。
その他のホームズ作品のネタバレ解説はコチラから探せるので、良かったらご参照ください。
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