『三幕の殺人(三幕の悲劇)』のネタバレ解説・あらすじ・相関図

『三幕の殺人(三幕の悲劇)』のネタバレ解説・あらすじ・相関図

アガサ・クリスティのミステリー小説『三幕の殺人(三幕の悲劇)』。この物語は、二つの異なる場所で起きた同じ手口の悲劇を追う、ポアロシリーズの長編第九作目です。

そこでこのページでは、「人物相関図」と「物語のポイント」を確認しながら、本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

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物語について

解説の前に、最終的な人物相関図あらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

最終的な人物相関図

以下は、本作品の最終的な人物相関図です。パソコンの場合は画像をクリックして拡大、スマホの場合はピンチアウトしてご覧ください。

相関図

あらすじ

◆ 第一幕

舞台を引退したチャールズ・カートライトが住むクロウズ・ネストでパーティが開催される。集まったのはチャールズの友人や土地の人で、ポアロもその一人だった。

パーティが始まりそれぞれが談笑している中、牧師のスティーヴン・バビントンが突然苦しみ始める。安静にして横たわらせるも、バビントンは息を引き取った。

◆ 第二幕

自ら命を絶ったと疑われたが、チャールズとエッグは疑問を持つ。理由は、温厚で優しいバビントンに動機が見当たらないからだった。

しばらくして、バーソロミュー卿が自分の催したパーティで絶命。最期の状況は、バビントンのときと酷似していた。

◆ 探偵役

パーティの参加者がクロウズ・ネストにいた人物たちと同じだったことから、チャールズはサタスウェイトと捜査を開始。疑われていたエリスが無実である証拠を見つけ、バビントン落命との関連性を立証する。

しかしその後、エッグを加えて捜査を続けるがなかなか思うように進展しなかった。どうしようかと行き詰っている矢先、ポアロが訪ねてきて捜査に参加する。

◆ 第三幕

集めてきた情報を聞いたポアロは、関係者を集めてパーティを開催。 チャールズと狂言を演じて、二人を亡き者にした方法を明らかにしてみせる。

翌日、電報が届いたのでサナトリウムに行ってみると、連絡した張本人であるド・ラッシュブリジャーは何者かに処理されていた。ポアロは一日考える時間を設け、すべての謎を一本につなげる。

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解説と考察

それでは本物語の解説と考察に移ります。

手を下した方法

まずは、チャールズがバビントン、バーソロミュー卿、ド・ラッシュブリジャーに手を下した方法です。

第一幕

前提として、今回のメインターゲットであるバーソロミュー卿はカクテルを飲みません。それを踏まえたうえで、チャールズが第一幕でとった行動は以下の手順です。

  1. 全員分のカクテルを作る
  2. エッグだけは安全なグラスを自分で渡す
  3. グラスの一つにニコチンを入れてテンプル(客間女中)に配らせる
  4. 誰かがグラスを取って命を落とす
  5. 倒れた人に注目が集まっている間にグラスをすり替える

方法としてはよく使われる手なので、ポアロも物語半ばで種を明かしました。ポイントは、この時点で命を落とすのはエッグとバーソロミュー卿以外誰でも良かったということ。この隠された事実が、動機を究明する大きな妨げとなりました。

第二幕

本当のターゲットであるバーソロミュー卿を亡き者にした方法は、第一幕とほぼ同じ。異なる点としては、エリスに扮したチャールズが、自分でニコチン入りのグラスをバーソロミュー卿に渡したこと。無差別性はなく、確実に命を奪いました。

第三幕

最後にチャールズは全く関係のないド・ラッシュブリジャーを手にかけました。方法は、身も知らぬ少年にポアロ宛ての電報を頼み、自分はド・ラッシュブリジャーにチョコレートを郵送。電報を見てポアロが駆けつけたときには、すでに亡くなっているという寸法です。

理由は用済みになった囮を消すため。しかし電報をポアロ宛てに送ったことが、致命的なミスとなってしまいました。

あるいはこの人の知らないことをね…。

出典元:角川文庫『三幕の殺人(第三幕 第十三章)』アガサ・クリスティー/赤冬子訳

ド・ラッシュブリジャーが亡くなったことを聞いてポアロが放ったこの一言、すべてを見通していてカッコいいですね。

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黒幕について

チャールズが黒幕であるというヒントのいちばん大きなものは、ポアロやサタスウェイトも気にしていた次の証言です。

エリスさんに冗談をおっしゃってることさえありました。ベイカーさんには決してなさらなかったことですわ。

出典元:角川文庫『三幕の殺人(第二幕 第四章)』アガサ・クリスティー/赤冬子訳

普段無愛想というバーソロミュー卿がおどけた様子を見せるのは、仲の良い友人の前だけ。これにチャールズが一流の元役者であることを加味すれば、エリスと同一人物であることは想像がつきます。

しかし変装はわかっても動機が謎。チャールズ自身がこの事実を隠していたので後ろ暗いことがあるのは確かですが、動機とセットで考えなければ決め手になりません。

動機について

本作品のいちばんの目玉は、ポアロも最後まで解明に手こずった動機です。もともとのターゲットは、自分が既婚者であることを知っているバーソロミュー卿のみ。遂行するためのリハーサルとしてバビントンが無差別に命を落とし、ド・ラッシュブリジャーが囮として処理されました。

では、動機についてのヒントはなかったのか。直接的ではないにしろ、エッグが話し合いの中で次のような発言をしています。

結婚に関係あることかもしれないわ、牧師さんてずい分結婚は扱うものですもの。誰か二重結婚してる人かもしれない

出典元:角川文庫『三幕の殺人(第二幕 第七章)』アガサ・クリスティー/赤冬子訳

これはもしかしたら、読者に向けて「二重結婚」をインプットさせる意図があったのかもしれません。ここでチャールズが結婚していることを考えられれば、相思相愛にもかかわらずエッグに手を出さない理由に説明がつくからです。とはいえ年齢差という理由も違和感がないので、うまくごまかされていると思います。

他にヒントとなるような文章は見当たりません。したがって、チャールズがエッグと交際しない理由に目を向けられるかが、いちばんのカギと言えるでしょう。

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感想

黒幕=チャールズ=エリスは結びつけられたものの、動機が最後までわかりませんでした。人を亡き者にする理由は、もともと処理したいと思っているか二次的に起こるものである。動機発生の先入観を突かれ、アガサ・クリスティーの術中にまんまとハマってしまいました。

「順番を入れ替えてみる」ことは現実世界にも役立つと思います(悪いことじゃなくて)。例えば行っている作業の手順を見直すことで、大きな効率アップや発見につながるかもしれません。今あるものに何か変化をもたらすには、先入観を取り払うことが必要です。

チャールズが行ったのは、自分の欲望を満たすためにほかの人を犠牲にすることでした。理性があれば思い留まれることですが、サタスウェイトがメアリとの会話中にこんな発言をしています。

中には一たん思ったことは、執念というか、つきまとって離れない人がいて、彼らはそれをすぐ実行に移してみる喜びのことしか考えないんですよ

出典元:角川文庫『三幕の殺人(第三幕 第二章)』アガサ・クリスティー/赤冬子訳

チャールズもこの中に分類される人だったということでしょう。ただ、結婚した女性が精神を病んでしまったことで、望んでいた幸せな未来が失われた。一連の凶行は、それを取り戻したかっただけなのかもしれません。

ドラマについて

デヴィッド・スーシェが主役を演じる海外ドラマ「名探偵ポワロ」では、2010年に本物語を放送しました。大筋のストーリーは同じものの、次の相違点があります。

  • サタスウェイトが登場しない
  • バーソロミュー卿に手を下した場所がメルフォート療養所
  • 解決の舞台が劇場で関係者が全員集合している

原作では物語の語り手であり、チャールズの捜査協力者でもあるサタスウェイトがドラマでは登場しません。これが最大の違いです。

サタスウェイトの役を担っているのがポアロ。原作で後半しか目立たない主人公の登場シーンを増やすため、このような脚本にしたのだと思います。ほかにも上記のような細かい違いはありますが、物語に大きく影響を与えるものではありません。

また、ドラマでは美しいロケ地が印象的でした。調べてみたところ、次の二つの場所を特定できたのでご参考までに記載いたします(「Googleマップ」をクリックすると、新しいタブで地図が開きます)。

ロケ地 説明 地図
セント・アンズ・コート カラスの館(クロウズ・ネスト)の外観 Googleマップ
ネブワース・ハウス メルフォート療養所の外観 Googleマップ

チャールズの孤独。すり寄ってくる人間の愛は本物ではない。解決シーンで流したチャールズの涙は、本当にずっと苦しんできたかと思うほど自然でした。

そして真実を明らかにしなければならないポアロの悔しさと抑えきれなかった怒り。友人であるチャールズの孤独に気付いてあげられなかった無念さは、観ていていつの間にか涙が出たほど感動的でした。二人をメインにして進められた話だからこそ、より感情移入してしまったのだと思います(最後はドラマの感想ですいません)。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。