黄色いアイリス(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

黄色いアイリス(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

アガサ・クリスティーのポアロシリーズ『黄色いアイリス』。この物語は、黄色いアイリスが用意されたテーブルで過去の悲劇が繰り返される、同名の短編集に収録されている作品です。

そこでこのページでは、真相など本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

物語について

解説する前に、登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

登場人物

『黄色いアイリス』の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
エルキュール・ポアロ 私立探偵
バートン・ラッセル アメリカの富豪
アントニー・チャペル ポアロの知り合い
ポーリーン・ウェザビー バートンの義妹
ローラ・ヴァルデス 南アメリカ出身のダンサー
スティーヴン・カーター 外交官
アイリス・ラッセル バートンの妻
ルイジ 「白鳥の園」のウェイター

あらすじ

ポアロがラジエーターの均一性に満足していると、謎の女性から妙な電話がかかってくる。大変な危機が迫っている予感がするので、レストラン「白鳥の園」の黄色いアイリスを飾ったテーブルに来てほしいというのだ。

レストランではバートン・ラッセルがパーティーを開いており、妻・アイリスの命を奪った人物をあぶり出すことが目的だという。当時の晩を再現するかのように照明が消え全員が歌に聞き入った直後、ポーリーン・ウェザビーが同じように亡くなる悲劇が起こってしまった。

解説と考察

それでは本物語の解説と考察に移ります。

真相

ポーリーンの命を奪いカーターの仕業だと見せかけようとしたのは、パーティーの主催者であるバートンでした。動機はポーリーンが所有者になっているアイリスの遺産。それまでバートンが管理していたその遺産を、勝手に流用していたことが露見するのを恐れたためでした。

バートンの計画は以下の通りです。

  1. パーティーを開催し四年前の関係者を集める
  2. 当時の再現をすると言って照明を消し全員を歌に注目させる
  3. 暗闇に乗じてウェイターのフリをしポーリーンのグラスに青酸カリを混入
  4. 青酸カリの包み紙をカーターのポケットに入れる

この計画でポーリーンの命を奪い、カーターに全責任を押し付けるつもりでした。しかしポーリーンが危険を察知し、ポアロに連絡したのが誤算。ポアロが予防策を講じ、計画は失敗に終わってしまいました。

アイリス落命の理由

アイリス落命の理由は最後まで謎のままでしたが、可能性としては二つでしょう。財産目当てにバートンが命を奪ったというのが一つ。方法はポーリーンの命を奪おうとしたのと同じで、ハンドバッグに青酸カリを入れて自ら命を絶ったと見せかけようとしたという可能性です。

カーターに捨てられアイリスが本当に命を絶ったというのがもう一つ。ポーリーンが最後、アイリスが命を絶ったのはカーターのせいではないかと発言しているのがその根拠です。カーターのポケットから青酸カリが見つかったとき、バートンがわめきましたがそれは真実だったのでしょう。

個人的には後者なのではないかと思っています。なぜならバートンがアイリスの命を奪ったならば、そのときにカーターを破滅に追い込んでも良かったからです。したがってバートンはアイリス落命の状況から着想を得て、自分の妻の不倫相手だったカーターを陥れる計画にしたのでしょう。ただ四年も間が空いていることを考えると、ついでくらいの気持ちだったのだと思います。

ドラマについて

デヴィッド・スーシェが主役を演じる海外ドラマ「名探偵ポワロ」では、1993年に本物語を放送しました。以下は原作との主な相違点です。

原作との相違点
  • 黄色いアイリスがポワロの事務所のポストに入っている
  • アイリスが亡くなったのが二年前のブエノスアイレスでポワロも同じ場にいた
  • ポワロとヘイスティングスがレストランのオープン前に関係者のもとを訪れる
  • ヘイスティングスが動機を調べに行く
  • カーターがブエノスアイレスの将軍に賄賂を送っていた
  • 南米のイタリア人のルイジがフランス料理で英国に進出
  • ポワロが英国料理を我慢して食べる

現在におけるレストラン「白鳥の園」のシーンは原作に則っていますが、それ以外は変更・追加点が多くあります。まずはポワロが関わることになったきっかけ。原作では謎の女性(ポーリン)から電話を受けますが、ドラマでは黄色いアイリスがポストに届けられただけとなっています。

それだけでポワロが危険を察したのは、アイリスが亡くなったブエノスアイレスの悲劇に同席していたから。しかも直後、ポワロはスパイ容疑で逮捕。まったく身に覚えのない疑惑で強制送還されてしまいますが、これは陰謀を企てていたカーターらがポワロをジャマに思ったからでした。

原作に登場しないヘイスティングスの活躍は控えめ。ポワロに頼まれてアイリスとポーリンの遺言状を確認しに行くところが数少ない見せ場です。ただ最後ポワロに、毛嫌いしている英国料理を食べさせることには成功します。

感想

もしアイリスが自ら命を絶ったとすると、不倫がすべての元凶となります。本人が命を捨てたことはもちろんですが、バートンも思わぬお金が転がり込んできて目が曇っていったことになるからです。そして今度は流用を隠すために過ちを重ねようとした。不倫一つが波及して次々に悲劇を生む、切ない物語だと感じました。

それにしてもポーリーンの直感や大胆さは見事なもの。現場にポアロを引き出した電話での調子、周りの誰もが命を落としたように思った演技。ポアロも大絶賛するほどなので、もしかしたらこの機会に演技の道に進んだかもしれません。

黄色いアイリスの花言葉には「復讐」という怖い意味があります。追悼と称して黒幕を炙りすことが目的だと言っていたので、バートンは花言葉をわかったうえで演出したのでしょう。しかし黄色いアイリスの存在を知っていたことからポーリーンが電話してきたとポアロが察知したので、結果的にミスになったと言えます。もしかしたら亡くなったアイリス本人の復讐だったのかもしれませんが。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。