マスグレーヴ家の儀式(ホームズ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

マスグレーヴ家の儀式(ホームズ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ『マスグレーヴ家の儀式』。この物語は、駆け出しのころのホームズがマスグレーヴ家に代々伝わる儀式書と二人の失踪者の謎を追う、『シャーロック・ホームズの思い出』に収録されている短編小説です。

そこでこのページでは、本作品の結末や儀式書に記された暗号などの解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

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物語について

解説する前に、登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

登場人物

『マスグレーヴ家の儀式』の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
シャーロック・ホームズ 私立探偵
ジョン・H・ワトスン 医師
レジナルド・マスグレーヴ ホームズと同じ大学の学生、イギリス貴族の末裔
リチャード・ブラントン 執事
レイチェル・ハウエルズ 第二メイド
ジャネット・トレジェリス 猟場管理人頭の娘

あらすじ

散らかし放題の部屋に嫌気が差したため片づけを提案すると、ホームズは大きなブリキの箱を寝室から持ってくる。中身はホームズが手掛けた初期の仕事の記録で、うち一つは有名になるきっかけになったマスグレーヴ家の儀式にまつわるものだった。

大学を卒業してから四年後、学生時代の知り合いだったレジナルド・マスグレーヴが自身の屋敷のことでホームズを頼って訪ねてくる。マスグレーヴ家に伝わる儀式書を盗み見しクビにした執事が突然失踪し、さらには恋仲にあったメイドまでがいなくなったというのだ。

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解説と考察

それでは本物語の解説と考察に移ります。

失踪者の行方

いなくなったブラントンは、マスグレーヴ家の儀式書が示す穴倉の中で息絶えていました。宝物の場所を特定したブラントンが、穴倉の蓋になっている板石を動かすためにレイチェルを呼んだことがきっかけ。穴倉の中に入り宝物を出したところで、レイチェルの手で閉じ込められそのまま息を引き取りました。

レイチェルを選んだのは、自分に惚れた女性をいつまでも利用できると考えたため。しかしそれは大きな勘違いで、レイチェルのブラントンに捨てられたことに対する恨みは相当なものでした。その後レイチェルは宝物を池に捨て、どこか海外に逃げたとホームズは推測します。

ブラントンは窒息したので空気が通っていなかったのでしょう。ただもし仮に空気があったとすると、ブラントンが閉じ込められてからレイチェルが失踪するまでが三日間。警察の捜索が打ち切られホームズが来るまでの日数が不明ですが、水なしで人間が生きられるのは四~五日と言われているので、もっと早くしていればブラントンは助かったかもしれません。

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儀式書に記された暗号

マスグレーヴ家に伝わる儀式書は、宝物の在り処を示す暗号でした。次の表は、儀式書の内容とその意味をまとめたものです。

儀式書の内容 意味
それは誰のものであったか?去りし人のものなり チャールズ一世
それを得るべき者は誰か?やがて来る人なり チャールズ二世
どの月であったか?初めから六つ目 六月
太陽はどこにあったか?樫の上 太陽が樫の木の上にあるとき
影はどこにあったか?楡の下 楡の木が作る影の先端
いかにして歩を踏むべきか?(方角と歩数は省略します) 影の先端から進むべき道
われらはなにを与えるべきか?われらのものすべてを 隠した財宝
なにゆえに与えるべきか?信義のために 王家に対する忠誠

チャールズ一世は17世紀中旬に即位していたステュアート朝(イギリスの前身と考えて良いと思います)の王様です。権力を乱用して反発を招き、清教徒革命により敗走したというのが史実。物語の中では、当時王家に仕えていたマスグレーヴ家の先祖が、チャールズ二世(チャールズ一世の息子)が王位に返り咲いたときのため財宝を託され隠したという設定になっています。

ホームズが楡の木の影を調べる際に測量を行いました。数学の比による算出ですが、簡単な図にすると以下のようになります。パソコンの場合は画像をクリックして拡大、スマホの場合はピンチアウトしてご覧ください。

楡の木の影の測量

ホームズはこの計算を用いて、なくなってしまった楡の木が作る影の位置を特定。そこから儀式書に記された方角へ歩を進め、財宝の在り処、および息絶えていたブラントンを発見します。

しかし問題が一つあります。それは、楡の木の成長をまったく考慮に入れていないことです。儀式書が作られたのが17世紀半ば。ホームズとレジナルドが調査したのが19世紀半ばだと思われるので、およそ200年が経過しています(ホームズが大学を卒業して四年後の出来事、『緋色の研究』が1881年以降であるため19世紀半ばと推測)。

楡は比較的成長の早い樹木。堂々たる大木の樫が育つくらいですから、環境(日照、雨量など)も抜群に良いはずです。したがって儀式書が作られた当時の楡の木が作る影は、もっと短かったと言ってよいと思います(あと歩幅も少し気になりますが、ホームズとマスグレーヴ家の先祖が同じくらいの体格だったとしておきましょう)。

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ドラマについて

ジェレミー・ブレットが主役を演じる海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」では、1986年に『マスグレーブ家の儀式書』というタイトルで本物語を放送しました。以下は原作との違いの中で比較的大きな点です。

原作との相違点
  • 現在の出来事になっている
  • 猟をする
  • 儀式書の内容が変わっている
  • 柏の木になっている
  • 雨で順延
  • レイチェルが池から発見される

いちばん大きな違いは現在の出来事になっていること。理由は物語にワトスンを絡ませたかったからでしょう。それに伴い、ブラントンとレイチェルにまつわる謎が、ホームズとワトスンが屋敷に滞在しているときに起きます。

また、儀式書の内容も変更。具体的には月に関する一文(6つ目の月)が削られ、「西へ8掛ける8、北へ7掛ける7、西へ6掛ける6、南へ5掛ける5、さらに2掛ける2」と歩数が変わっています。原作では樫の木だったものが柏の木になっているのは、推測ですがちょうどよい場所がなかったのかもしれません。

マスグレーヴ家が住んでいる「ハールストンの屋敷」のロケ地は、バッダースリー・クリントンというマナーハウス(Googleマップ)。周りは緑に囲まれて池もある、なかなかきれいな場所でした。

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感想

宝探しのアドベンチャー的要素が面白かったです。上記でも解説しましたが、ちょっとした数学も出てきて、チャールズ一世や二世など史実に絡めているのも勉強になりました。歴史的人物の登場は、コナン・ドイルが学生時代にしていた古本屋通いの影響かもしれません。

ただ儀式書の最初と最後の意味はわからなくても、月の文から歩数の文まではあからさまなので誰も試してこなかったのかが気になるところ。マスグレーヴ家の人たちは代々伝わっているだけだと軽視し、まったく興味を持たなかったのかもしれません。それはそれで悲しいですが…。

本編とはほとんど関係ありませんが、冒頭でホームズの破天荒な生活態度が書かれています。手紙をマントルピースの棚の真ん中にジャックナイフで突き刺しておくなんてめちゃくちゃカッコいい。あと初期の記録の中に「アルミニウム製松葉杖」というのがありましたが、どんな謎だったのか気になります。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。