ゴルフ場殺人事件のあらすじとネタバレ:相関図も用いて徹底解説!

ゴルフ場殺人事件のあらすじとネタバレ:相関図も用いて徹底解説!

アガサ・クリスティのポアロシリーズ長編第二作『ゴルフ場殺人事件』。この物語は、ポアロの初期の相棒ヘイスティングズの将来が決まった重要な作品です。

そこでこのページでは、「人物相関図」と「事件の流れ」を確認しながら、本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

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物語について

解説する前に、最終的な人物相関図あらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

最終的な人物相関図

本物語には、脇役含めると総勢26人(2人は同一人物なので実質24人)もの人間が登場します。そんな登場人物の最終的な相関図をまとめたのが、以下の図です(パソコンの場合は画像をクリック、スマホの場合はピンチアウトしてご覧ください)。

最終的な人物相関図

あらすじ

◆ はじまり

ある日、ポアロのもとにポール・ルノールという人物から一通の手紙が届く。内容は、「抱えている秘密が原因で命を狙われている。助けてほしい」というものだった。

ポアロとヘイスティングズは、さっそくルノールの住むフランスのジュヌヴィエーヴ荘へ。しかしすでに時遅く、ルノールは今朝、息絶えた姿で発見されたことを聞く。

◆ ヘイスティングズの失態

調査を開始したポアロたちは、パリ警察の敏腕刑事ジローと合流。実績華々しくプライド高い人物であるジローは、ポアロのことを「過去の人」だと揶揄し、非協力的な態度をとる。

独自調査ためにゴルフ場へ行ったヘイスティングズは、ジュヌヴィエーヴ荘に来る前日に出会ったシンデレラと再会する。そして彼女の好奇心に負けて現場を案内し、不用意にも鍵を閉め忘れてしまう。その結果、凶器の短刀が消失。翌日、謎の男に刺さった状態で発見されてしまうのだった。

◆ ルノールの計画

ポアロは単身パリへ行き、今回と類似点が多くドーブルーユ夫人とルノールが関わっていた「ベロルディ事件」の情報を集めてくる。ルノールは身を隠し南米で財産を築きフランスに戻ってきたのだが、ドーブルーユ夫人に正体がバレてゆすられていた。

そこでルノールが考えた策は、妻に協力してもらい自分自身を死んだことにする狂言。しかしその計画を知った誰かが、自分の利益のために本当にルノールを亡き者にしたのだとポアロは推理する。

◆ 結末とヘイスティングズの愛

逮捕されたジャックの前に現れたベラが自首したことで、事件は解決したかに見えた。しかしポアロが仕掛けた罠に真犯人が引っかかり、意外な展開で終わりを告げる。その人物はマルト・ドーブルーユだった。

一方、ヘイスティングズはポアロの粋な計らいによりシンデレラことダルシー・デュヴィーンと再会。シンデレラ物語と2人の出会いに例えてプロポーズするのだった。

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解説と考察

ゴルフ場のバンカー

それでは、本物語の解説と考察に移ります。

計画の流れ

この物語は、ルノール夫妻が計画した「第一の事件」とマルトが起こした「第二の事件」に大別され、流れを図にすると以下のようになります(パソコンの場合は画像をクリック、スマホの場合はピンチアウトしてご覧ください)。

計画と事実の流れ

マルトはルノール夫妻の計画をまるまる乗っ取り、遺産を自分のものにしようと企てました。彼女が実際に行ったのはたった1つ、「ポール・ルノールを刺したこと」だけです。

このことにはポアロも次のようなことを言っています。

偉大なる犯罪者というものはつねにシンプルそのものなのですよ

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『ゴルフ場殺人事件(28 旅の終わり)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

トリックを使って何かしようとしたのはルノール夫妻なので、マルトに結びつく証拠がなかなか出てきません。これは謎を解く者にとっては非常に難しいこと。いくら名探偵のポアロといえども舌を巻きました。

しかしポアロは、次の要素からマルトが怪しいと睨みます。

マルトに疑惑を持った理由
  1. ルノール夫妻の計画を盗み聞きできた
  2. ルノールが亡くなると直接の利益を得る
  3. ドーブルーユ夫人の娘である
  4. ジャックが3本目の短刀をプレゼントした可能性のある唯一の人物である

ひとつひとつは小さなことですが、あらゆる可能性を考えるポアロだからこそ見出すことができた理由です(3は偏見入ってると思いますが…)。「些細なことだからといって適当に扱ってはならない」ということを、暗に示しているのではないでしょうか。

そしてポアロはルノール夫人と協力して罠を仕掛け、最後の最後でマルトをあぶり出すことに成功しました。ただ、最後のマルトの行動はリスクが高く安直過ぎる気もします。「もう少しで手に入る」という欲が、いままで完璧だった計画を台無しにしてしまいました。

もしマルトが行動しなかったら、証拠がつかめず迷宮入りしていたかもしれません。もちろんルノール夫人が本当にジャックを勘当してしまえば、何も手に入らないんですけどね。

3組の愛情

本物語は、次の美しい3組の愛情も目立つ作品でした

3組の愛情
  • ルノール夫妻
  • ジャックとベラ
  • ヘイスティングズとシンデレラ

愛情の種類は三者三様。ルノール夫妻は今までの人生をやり直してでも一緒にいたいと想い、ジャックとベラは自分が捕まってでもお互いを庇い合い、ヘイスティングズとシンデレラは彼の一途な優しさに彼女が惹かれていく。

これらを見ると、マルトが持っていた「お金目当ての愛情」は非常に薄っぺらく感じます。もしかしたら、作者のアガサ・クリスティはそういった対比効果も狙っていたのかもしれません。

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ドラマについて

デヴィッド・スーシェが主役を演じる海外ドラマ「名探偵ポワロ」では、1996年に本物語を放送しました。ただしドラマ内では、原作と大筋は同じものの以下のような多くの内容変更が行われています。

原作とドラマの相違点
  • ヘイスティングズはベラに恋をする(シンデレラは存在しない)
  • フランスに旅行へ来たポアロにルノールが調査を依頼する
  • ジャックが自転車好き
  • ヘイスティングズがゴルフのラウンドをしている最中にルノールが発見される
  • メイドはレオニイしか出てこない

このドラマシリーズは、物語の面白さに加えてきれいな建物や景色も見どころの1つです。本物語では、ポアロたちが泊まるホテルや海岸沿いの景色が美しく、実際に行って見てみたいなと感じました。

登場人物に関しては、パリ警察のジローがいい味を出しています。「推理勝負の敗者はトレードマーク(ポアロは髭、ジローはパイプ)を失う」という、原作にはないちょっとした追加要素も面白かった。しかも、ジローは嫌味なキャラクターのはずなのですが、なんとなく憎めないところも良かったです。

少し残念だなと思ったのは、シンデレラが出てこなかったこと。最後にベラはヘイスティングズと結ばれて原作と同じような結末になりますが、個人的に彼女はジャックと結ばれてほしかった。お互いに庇い合うほどの愛の強さを持っていたのだから。

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感想

容疑者が次から次へと変わっていく終盤の展開は、とても読みごたえがありました。正直ベラが自白した時点で終わりだと思っていたので、マルトが現れたときには完全に油断。用意されていたもう一展開に虚を突かれてしまいました。

トリックとしては計画の乗っ取りがメインなので特に意外性はないものの、心理学には興味を惹かれました。「知らず知らずのうちに過去と同じことをしていた」。そんな経験、みなさんにもありませんか?もしかしたら、そこから自分の特徴を辿られてしまうかもしれませんよ。

そして何よりも、ポアロのヘイスティングズに対する想いが熱い。これは、例えば次の言葉に現れています。

あなたの感情が、時の試煉に耐え得るかどうかも見たかったのです。つまり、ほんとうの恋か、それとも線香花火のような情熱なのか、それがたしかめたかったのです。

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『ゴルフ場殺人事件(26 私あての手紙)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

ヘイスティングズの愛が本物だと分かったポアロは、このあと彼のために一肌脱ぎます。ポアロは本当に友人想いで素晴らしくカッコいい人間です。ただ同時に、「もうヘイスティングズといっしょにいることはできなくなるな」という寂しさも共存していたでしょう。そんなポアロの想いは、次の物語につながっていきます。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。