花婿失踪事件(ホームズ)のあらすじ・ネタバレ解説・感想・考察

花婿失踪事件(ホームズ)のあらすじ・ネタバレ解説・感想・考察

アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ『花婿失踪事件』。この物語は、結婚式の当日に失踪した花婿の行方についてホームズが相談を受ける、『シャーロック・ホームズの冒険』に収録されている短編小説です。

そこでこのページでは、真相など本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

物語について

解説する前に、登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

登場人物

本作品の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
シャーロック・ホームズ 私立探偵
ジョン・H・ワトスン 医師
メアリー・サザーランド 依頼人
ホズマー・エンジェル メアリーの婚約者
ジェームズ・ウィンディバンク メアリーの継父

あらすじ

ホームズとワトスンが月並について議論していると、メアリー・サザーランドが訪ねてくる。自由にできる100ポンドのお金をすべて払ってもいいから、舞踏会で知り合い婚約したホズマー・エンジェルの行方を捜してほしいというのだ。

エンジェルはどんなことがあっても心変わりしないとメアリーに誓わせ、2人は結婚に踏み切る。ところが結婚式当日、教会に向かう四輪馬車に乗ったはずのエンジェルがいなくなり、それから音沙汰がないというのである。

ネタバレ解説

それでは本物語のネタバレ解説に移ります。

花婿の行方

ホズマー・エンジェルはウィンディバンクの変装というのが真相でした。目的はメアリーに結婚させず、年100ポンドのお金を自由にし続けるため。いつまでも心変わりしないと誓約を立てさせ、今後現れるはずがないホズマーへ気持ちで縛り付けようとしたのです。

ホームズは次の要素から真相を推理しました。

  • 利益を受けるのはウィンディバンクのみ
  • エンジェルとウィンディバンクが同時に現れていない
  • エンジェルの変装を思わせる風貌
  • エンジェルとウィンディバンクのタイプで打った手紙の文字が同じ特徴

メアリーが近眼だったことも変装がバレなかった一要因となりました。四輪馬車での失踪は、単に反対側から出ただけのこと。無事計画はうまくいったかに思われましたが、メアリーがホームズに相談し真相が明るみになってしまったわけです。

名言

いくつかいいなと思う表現がありましたが、個人的なお気に入りは次の言葉です。

世のなかに月並なものほど、不自然なものはありゃしないんだよ

出典元:新潮文庫『シャーロック・ホームズの冒険(花婿失踪事件)』コナン・ドイル/延原謙訳

普通なんてありはせず、あった場合はそこに何か裏の真実や意図があるという捉え方です。

ワトスンの言うようにホームズの立場からくる穿った考えかもしれません。ただ1つの事実があった場合、深く掘り下げるとそこには何かしらユニークな要素が含まれているものです。しかもそれは想像も及ばないことの方が多い。

何を普通と思うかという問題もありますが、それはその人の経験や価値観から見ているだけで、実際はもっと興味深い要素があると考えさせられます。

感想と考察

エンジェルへの強い想いがメアリーを突き動かし、ホームズへの相談に至ったのでしょう。恋心で縛り付けるのは諸刃の剣。どんな行動に出るかわからない怖さがあるので、ウィンディバンクはそこを読み違えたと言えると思います。

作中でホームズはメアリーを啓発的だと表現していました。自分は読んでいてエンジェルがウィンディバンクの変装だとわかったので、確かにメアリーが持っていた特徴の方が興味深かったです。特に二本の条から、メアリーがタイプライターだと見抜いたのは面白い推理でした。

冒頭の議論で出た、夫婦の不和は入れ歯を外して投げつけるのが発端という話。確かに普通の小説家では思いつかないようなエピソードです。それにワトスンがなぜその記事を選択してしまったのか、そもそもこれも小説だと考えると可笑しくなってしまいました。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。

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