瀕死の探偵(ホームズ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

瀕死の探偵(ホームズ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ『瀕死の探偵』。この物語は、ホームズが衰弱し切った状況に陥る、『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収録されている短編小説です。

そこでこのページでは、『瀕死の探偵』の結末などの解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

物語について

解説する前に、登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

登場人物

本物語の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
シャーロック・ホームズ 私立探偵
ジョン・H・ワトスン 医師
カルヴァートン・スミス 農園主
ステイプルズ カルヴァートン・スミスの執事
ヴィクター・サヴェッジ カルヴァートン・スミスの甥
モートン スコットランドヤードの警部
ハドスン夫人 ベーカー街221Bの家主

あらすじ

ロンドンで最悪の下宿人を抱えるベーカー街のアパートの家主・ハドスン夫人がワトスンのもとを訪ねる。ホームズが病気にかかり三日間も飲まず食わずで、今にも命を落としそうだというのだ。

本人いわく患ったのはスマトラのクーリー病で、感染力が強いため医者であるワトスンも近づかせない始末。息も絶え絶えでうわごとも混じる中ホームズがワトスンに頼んだのは、クーリー病に詳しいカルヴァートン・スミスを呼びに行くことだった。

解説と考察

それでは本物語の解説と考察に移ります。

結末

ワトスンやハドスン夫人を心配させたホームズの病気はなんと仮病でした。目的はカルヴァートン・スミスにヴィクター・サヴェッジの命を奪った件を自白させること。まんまとスミスは小箱の罠にホームズがかかったと思い、ペラペラと自分のした悪行をしゃべってしまいました。

スミスが自白してしまったのは自己顕示欲が原因でしょう。わざわざホームズに真実を語る必要はありませんからね。逆に考えると、ホームズとしては自白させるしか方法がなかったのだと思います。おびき出せなければ意味がなくなってしまいますが、スミスの性格を見抜いたホームズの作戦勝ちといえるでしょう。

また、ホームズはワトスンにクーリー病を患ったと説明しました。このクーリー病は別名「熱帯性潰瘍」といい、四肢に腫瘍を生じるだけで発熱は稀だそうです(ヒトからヒトへの感染もない)。したがってホームズの仮病は、病名と症状くらい知っていれば見抜けたはず。熱帯地方の珍しい病気とはいえ、ある意味ではワトスンの勉強不足といえるかもしれません。

小箱の罠

スミスが小箱に仕掛けた罠についてはいろいろな説があるようです。どんなものかを判断する材料としては、以下が挙げられます。

  • スミスがスマトラ在住
  • 締め付けられるような痛みが出る
  • 東洋の珍しい病気
  • ヴィクターが発症して四日で命を落としている
  • ばねで刺して感染させようとしていた

まず推測できるのが、スマトラで多く見られる病気なのではないかということ。なぜなら、研究には患者が身近にいた方が都合が良いためです。症状や進行速度からはそれ以上推測できることはありません。ただ小箱が届いた直後(水曜)に発症したことをスミスが疑わなかったので、潜伏期間のない病原体なのでしょう。

スミスはばねで刺してホームズを感染させようとしていました。このことから、病原体は金属に寄生できて空気中でも平気な存在なのだと思います。つまり宿主がいなくても生存できる病原体だということ。まとめると感染症でありながら即効性が高く、どこででも生存できるとんでもないものになってしまいますが、一つの説としてはアリなのではないかと思っています。

ドラマについて

ジェレミー・ブレットが主役を演じる海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」では、1994年に本物語を放送しました。以下は原作との違いです。

原作との相違点
  • ホームズが実験をしているときにアデレードが相談しに来る
  • ビクターが銀行の重役で詩人になる夢を持っている
  • スミスとビクターがいとこ
  • ビクターの屋敷で晩餐会が行われる
  • ベイカー街不正規隊が登場
  • ホームズが感染経路を調査する
  • ゲットグレイブという男が巣窟を案内する
  • ワトスンが小箱に触ろうとする場面がない

原作の内容は最後の15分くらいで、それまでの話はドラマ用に追加されたもの。詳細なビクター・サベイジという人物のキャラ、落命、ホームズとスミスが対峙するまでの過程が主な追加内容となっています。

原作部分での相違点としては、ワトスンがスミスの送った小箱に触ろうとしていないこと。すさまじい叫び声でワトスンがホームズに激怒されるシーンがありません。理由は不明ですが、叫び声なんてあげたら仮病だとバレてしまうからでしょうか。

『四人の署名』以来のベイカー街不正規隊が登場。ゲットグレイブを見つけ、ビクターが行っていたロザーハイズを特定するのに一役買っています。

感想

細菌で人の命を奪うという面はありますが、本作はミステリーというよりもお笑い要素が強い作品だったように思います。仮病、慌てふためくワトスンとハドスン夫人、まんまと術中にはまったカルヴァートン・スミス。そして後で弁解されていたものの、ワトスンはホームズに医者として失格的なことを言われてしまうのだから可哀想な話です。

ただ仮病とはいえ、三日間も飲まず食わずでいたのだからホームズのプロ根性を感じます。加えてホームズ流の完ぺきなメイク。執筆されたのかどうかわかりませんが、ホームズの詐病の論文はぜひとも読んでみたいです。

本作の冒頭でワトスンがホームズの破天荒ぶりを例に挙げこんなことを書いていました。

ロンドンで最悪の下宿人ではなかろうか

出典元:角川文庫『シャーロック・ホームズ最後の挨拶(瀕死の探偵)』コナン・ドイル/駒月雅子訳

可能性は極めて低いですが、騙された怒りが再燃してきて腹いせをしたとも考えられます。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。