声(松本清張の小説)のあらすじ・ネタバレ解説・感想・考察

声(松本清張の小説)のあらすじ・ネタバレ解説・感想・考察

松本清張の小説『声』。この物語は、電話交換手の女性が間違えてかけた先で下手人と会話してしまう短編小説です。

そこでこのページでは、結末やアリバイトリックなど本作品のネタバレ解説を行いました。一部ネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

登場人物

『声』の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
高橋朝子 新聞社の電話交換手
小谷茂雄 朝子の婚約者
川井貢一 茂雄の会社の同僚
村岡明治 茂雄の会社の同僚
浜崎芳雄 茂雄の会社の同僚
鈴木ヤス 川井の情婦
石川汎 朝子が勤めていた新聞社の社会部次長
畠中 警視庁捜査一課係長
石丸 警視庁捜査一課課長
赤星真造 会社重役
赤星政江 真造の妻

あらすじ

ある新聞社の電話交換手をしていた高橋朝子が、石川汎に頼まれ赤星牧雄に電話をかける。すぐに出た相手は火葬場だと嘘を言い、誰かが横から切ったように突然通話が終わった。

朝子は赤星真造という会社の重役宅に間違えて電話していたのだが、翌日の新聞で彼の妻が命を奪われたことを知る。それは朝子が真造宅に電話をかけた時刻の凶行であった。

経緯を説明するため、朝子は警察署に出頭。声についてさまざまな質問をされたが、格別耳が良い朝子でも口では説明できなかった。しかし新聞は朝子の名前を出して大々的に取り上げた。

やがて事件は語られなくなり、朝子は会社を辞め小谷茂雄と結婚。茂雄は気まぐれな勤め方をして貧乏生活が続いたが、あるとき知り合いと会社を設立し景気が良くなっていった。

川井、村岡、浜崎という3人の同僚を家に呼び、茂雄は麻雀を頻繁にするようになる。そんなある日、朝子は食料品店にかかってきた浜崎からの電話を取り愕然とした。真造宅にかけた時に聞いたあの声だったからである。

一方の川井たちも、朝子が当時の電話交換手だったことを知った様子。数日後、朝子は茂雄が急病だと川井からの電話で文京区に呼び出された。

翌朝、東京都北多摩郡田無町の雑木林で、首を絞められた朝子の遺体が発見される。息絶えたのは前夜の10時から午前0時、肺臓に石炭の粉末が付着していた。

ネタバレ解説

それでは、本作品の解説に移ります。

朝子の命を奪ったのは、やはり川井と浜崎(ヤスも共謀)でした。問題となったのはアリバイ。小平にいる3人が、田端の機関庫から田無の雑木林に朝子を運ぶのは時間的に不可能という壁でした。

朝子、川井、浜崎、ヤスの行動を図にすると以下のようになります。

関係者の行動

朝子が田端で命を奪われたとされた根拠は、肺臓に付着していた石炭の粉末でした。その石炭を川井らは事前に持ち帰っており、命を奪う際に朝子に吸わせていたのです。これで現場が田端の機関庫だと思わせることができます。

実際の現場はヤスの家で、近所の人が来る前の午後10時10分からの空白の20分に凶行がなされました。そして皆が寝静まった後に川井が朝子を雑木林に遺棄。距離的に2キロほどありましたが、人通りもないため問題はありませんでした。

現場が田端である根拠をより一層強めるため、浜崎が朝子のハンドバッグを朝5時過ぎに機関庫に置きに行きます。ところが朝子が命を奪われた時刻からあったならば、午前3時から4時50分までの降雨でハンドバッグが濡れていなければなりませんでした。この事実が石丸の目に留まり、真相解明の取っ掛かりとなります。

感想・考察

声を聞いて命を狙われるという、若干おかしな要素もありつつ面白い物語でした。それにしても新聞に名前を出すのは危険だと思います。下手人に危険因子を教えるようなものだからです。昔は簡単に名前を公表していたのでしょうか。

疑問だったのは、朝子はなぜ警察に相談しなかったのかということ。確かにずいぶん前の出来事で捜査本部も解散していましたが、相談すれば力にはなってくれたと思います。浜崎の声をもう一度電話越しに聞きたいという欲求が勝ってしまったのでしょうか。

まったくの見当外れに終わりましたが、実は石川汎が関わっているのかとも考えました。なぜなら石川の転勤先と石炭に九州という共通点があったからです。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。

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