イタリア貴族殺害事件(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

イタリア貴族殺害事件(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

アガサ・クリスティーのポアロシリーズ『イタリア貴族殺害事件』。この物語は、命を奪われたイタリアの伯爵の部屋に食事をした形跡が残っている、『ポアロ登場』に収録されている短編小説です。

そこでこのページでは、真相など本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

物語について

解説する前に、登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

登場人物

本物語の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
エルキュール・ポアロ 私立探偵
アーサー・ヘイスティングス ポアロの友人
ホーカー 医師
ライダー ホーカー家の家政婦
フォスカティーニ イタリア人の伯爵
グレイヴズ フォスカティーニの執事
ロバーツ エレベーターボーイ
パオロ・アスカニオ イタリア人の紳士

あらすじ

ドクター・ホーカーが習慣になっていたポアロとの会話に興じていると、家政婦のライダーが取り乱した様子で駆け込んでくる。フォスカティーニ伯爵から恐ろしい電話があったというのでポアロらはアパートに行ってみたが、後頭部を強打されすでに息絶えていた。

部屋には三人で食事をした形跡が残っており、現に注文もされていたことが判明。外出していた執事のグレイヴズによると、金銭的なことで二人のイタリア人が訪ねてきていたという。

解説と考察

それでは本物語の解説と考察に移ります。

黒幕

フォスカティーニの命を奪ったのは、執事のグレイヴズでした。動機は恐喝者のフォスカティーニがアスカニオの依頼人からゆすり取った金銭。そして疑いから逃れるため、依頼人のことを表沙汰にできないアスカニオの立場の弱さを利用しました。

グレイヴズがとった行動は以下です。

  1. フォスカティーニの頭を大理石の像で強打
  2. 三人分の料理を注文
  3. 食器類をセットして料理を食べる
  4. 時計の針を8時47分に合わせて破壊
  5. エレベーターボーイに来客を告げる
  6. 8時47分に公衆電話からフォスカティーニの声を真似てホーカーに連絡

これでフォスカティーニがあたかも電話した時刻まで生きており、アスカニオと付添人が食事中に命を奪ったと見せかけようとしたのです。ただしさすがに三人分の料理は食べきれず、ライス・スフレだけはほとんど手つかずで残してしまいました。

グレイヴズは加えて二つのミスをおかします。一つはフォスカティーニが飲まないコーヒーをテーブルに用意してしまったこと。もう一つは8時47分は暗くなっていたにもかかわらず、カーテンを閉めなかったこと。この不自然な二つの要素は、実際に三人で食事などしておらず、暗くなる以前にフォスカティーニが絶命していたことの何よりの証でした。

立証

状況は完全にグレイヴズ黒幕説を示していましたが、決定的な証拠に欠けるのではないかと思います。確かに通話記録を調べれば、フォスカティーニの部屋からかけられていないことはわかるでしょう。しかしそれだけで、グレイヴズが公衆電話からかけたことにはなりません。本人が否定すれば、一応の言い逃れはできると思います。

コーヒーやカーテンの件も同じです。フォスカティーニがたまたまコーヒーを飲みたくなったのかもしれませんし、カーテンは暗くなってもまだ閉めなくてよいと思ったのかもしれません。

DNA型鑑定があれば、葉巻からグレイヴズだと特定できるでしょう。しかしこの時代にはまだない技術なので、いずれの要素をとっても証拠と呼ぶには不十分だといえます。強いて立証する方法を挙げるとすれば、目撃情報を丁寧に洗って8時47分にグレイヴズが公衆電話にいた証明をすることでしょうか。

ドラマについて

デヴィッド・スーシェが主役を演じる海外ドラマ「名探偵ポワロ」では、1993年に本物語を放送しました。以下は原作との主な相違点です。

原作との相違点
  • 人間関係が少し複雑
  • レモンがグレイブスといい感じ
  • フォスカティーニが猫を飼っている
  • 食事の量が二人分
  • グレイブスが妻と船で逃げようとする
  • ジャップが捜査にあたる
  • フォスカティーニのアパートの名前が「アディスランド・コート」で部屋が10号室
  • 止まっていた時計の時刻が9時10分
  • アスカニオの名前がマリオ
  • アスカニオの宿泊しているホテルの名前が「ジェンキンズ・ホテル」
  • ヘイスティングスが車を買うのに七週間も迷っている

物語は原作に則っているものの、人間関係が少し複雑になっています。まずフォスカティーニにゆすられていた人物がビッツィーニで、ヘイスティングスが車を買おうとしていた会社のオーナー。ビッツィーニはマスナーダという組織のアスカニオに、写真や資料を買い戻させようとしていました。つまり原作でのアスカニオが、肩書を変えてビッツィーニと二人に分けられたわけです。

そしてレモンにできたいい相手がグレイブスということになっています。しかしグレイブスがレモンに近づいた目的は、ポワロにイタリア絡みの作り話を吹き込むこと。最後ポワロは辛い事実をレモンに伝えますが、本人はグレイブスが猫の命を奪おうとしたことにキレていました。

また、ヘイスティングスが意外と大活躍。グレイブスに見せてもらった写真を覚えていて、逃亡に使う船が係留されている場所を突き止めます。ところが七週間も迷い手帳に「新車、決断の日」とまで書いた外車は、カーチェイスの際に破損。もはやお約束です。

感想

表沙汰にできない事情を利用してアリバイを不明確にしたことは、なかなか卑劣な行為だと思います。アスカニオにしてみれば依頼人を守らなければならないし、かといって黙っていれば自分が捕まってしまう。結果起訴はされなかったものの、二重の苦しみを味わったことでしょう。

気になったのは、グレイヴズがコーヒーを出してしまったミス。仕えていた期間が短かったのかもしれないですが、それでも主人がコーヒーを飲むか飲まないかくらいは知っててもいいように思います。よほど適当に仕事をしていたか、まったく興味がなかったのか。

それにしてもグレイヴズは本当によく食べました。おそらく事情聴取されたときも満腹だったのではないでしょうか。また最後にポアロがどのくらいお金が使われたかを気にしていますが、少なくともミュージックホール代分はないだろうと思います。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。

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