クリスマスプディングの冒険(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・感想
アガサ・クリスティーのポアロシリーズ『クリスマス・プディングの冒険』。この物語は、東洋の殿下が女性に持ち逃げされてしまったルビーの行方を追う、同名の短編小説に収録されている作品です。
そこでこのページでは、結末など本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。
物語について
解説する前に、登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。
登場人物
『クリスマス・プディングの冒険』の登場人物は以下です。
登場人物名 | 説明 |
---|---|
エルキュール・ポアロ | 引退した私立探偵 |
ホレイス・レイシー | キングス・レイシーの主人 |
エミリーン・レイシー | ホレイスの妻 |
セアラ・レイシー | ホレイスとエミリーンの孫娘 |
コリン・レイシー | ホレイスとエミリーンの孫息子 |
マイケル | コリンの友達 |
ブリジェット | コリンのいとこ |
デズモンド・リーウォートリー | セアラの恋人 |
デイヴィッド・ウェルウィン | セアラの友人 |
ダイアナ・ミドルトン | レイシー家の親せき |
ペヴレル | レイシー家の執事 |
ロス | 料理人 |
アニー・ベイツ | ロスのお手伝い |
ジェスモンド | イギリス連邦のために動いている男 |
あらすじ
イギリス連邦の利益のために動いているというジェスモンドが、ポアロにしつこく協力を依頼していた。未開国の王子の愚行により、由緒あるルビーがいっしょに遊んだ女性に持ち去られてしまったというのである。
セントラル・ヒーティングに興味を示し、ポアロは女性が潜伏しているレイシー家の屋敷を訪問。歓待を受けイギリスの古風なクリスマスを楽しんでいると、プディングの中から赤い大きな石が発見される。
解説と考察
それでは本物語の解説と考察に移ります。
黒幕と結末
デズモンド・リーウォートリーが首謀者で、妹として入り込んでいた女性がルビーを盗んだ張本人でした。二人がルビーの隠し場所として選んだのが、元日用に作られたプディングの中。プディングは元日まで寝かせておくため、誰の目にも触れない絶好の隠し場所でした。
ところがクリスマス当日の朝、アニーがプディングを落としてしまうというアクシデントが発生。気を利かせたロスはやむを得ず、元日用のプディングを食卓に出しました。ホレイスに切り分けられたプディングからルビーが出てきて、デズモンドは内心大慌て。こっそりポケットに入れたポアロに睡眠剤を盛り夜中に奪い返そうとしますが失敗に終わります。
クリスマスの翌朝、ポアロはデズモンドを出し抜くためコリンたちのお芝居を利用。遺体役のブリジェットに協力してもらい、偽物のルビーを掴ませデズモンドを逃走させました。これで王子の期待通り秘密裏にルビーを取り返し、なおかつセアラを悪人の手から救ったわけです。
秘密の手紙
万事うまく解決したポアロですが、一つだけわからないことがありました。それはプディングに手を付けないよう警告した手紙の送り主と理由です。些細ではあっても、わからないことがあるというのはポアロにとって屈辱でした。
送り主の正体はアニー・ベイツ。理由はデズモンドらがプディングの中に何か入れた話を盗み聞きし、ポアロが命を奪われるんじゃないかと思ったからでした。ポアロを救いたい一心で、危険が迫っていることを何とか伝えたかったのです。
ポアロはアクシデントだと話していましたが、アニーがプディングを落としたのもわざとかもしれません。そしてポアロがアニーに贈り物をすることにしたのは、自分に解けない謎を提供してくれた感謝のしるしだと思います。
ドラマについて
デヴィッド・スーシェが主役を演じる海外ドラマ「名探偵ポワロ」では、1991年に『盗まれたロイヤル・ルビー』というタイトル本物語を放送しました。以下は原作との主な相違点です。
- ポワロが外務省に連れ去られる
- ポワロもプディングをかき混ぜる
- プディングからルビーが出てきてすぐに殿下に返す
- デズモンドの妹が病気ということになっていない
- ホレイスが株で大損している
- デズモンドらが逃げようとするが捕まる
- デズモンドに掴ませたルビーが本物
- セアラが殿下にお知らせする役目を担う
- ホワイトクリスマスではない
- レモンは親類宅に、ヘイスティングスはスコットランドに行ったことになっている
- ポワロがマンゴーの権威
物語は原作に則っていますが、ところどころ違いがあります。大きな変更点の一つは、プディングから出てきたルビーをポワロが殿下にすぐに返却すること。しかし持ち去った女性を捕まえてないため、ポワロは殿下に怒られてしまいます。
原作では偽物のルビーを掴まされたデズモンドでしたが、ドラマで持ち去ったのは本物。さらに一人で高飛びするところを、協力者の女性と一緒に逃げようとして捕まる結末になっています。同じタイミングでいなくなっていたセアラは、ポワロに頼まれ殿下に言伝。殿下はセアラにデレデレし、最後の最後まで女性にだらしないところを見せます。
感想
ルビーの隠し場所にプディングの中を選んだのは大胆だと思いました。イギリスの伝統的な家庭が、プディングを長い時間寝かせて作ることを逆手に取っているからです。ただ回収するときにはどうしても痕跡が残ってしまうのが難点。同時に姿を消したら、絶対に怪しまれてしまいます。
ポアロはコリンたちのお芝居を利用し、すべてを丸く収めました。しかし少しの時間であるとはいえ、みんな本当にブリジェットの命が奪われたと思ったはず。特に中学生のコリンなんかは衝撃が強すぎて、下手をしたらトラウマになっていたかもしれません。
本作品はアガサ・クリスティーが体験した子どもの頃の思い出が詰まっているようです。だからかパーティーなどはとても楽しそうに描かれています。ポアロも最初は乗り気ではなかったですが、終わってみれば結構楽しんだのではないでしょうか。
少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。
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