レディフランシスの失踪(ホームズ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

レディフランシスの失踪(ホームズ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ『レディ・フランシスの失踪』(翻訳者により『レディ・フランシス・カーファクスの失踪』『フランシス・カーファックス姫の失踪』などと訳されているものもアリ)。この物語は、その名の通りレディ・フランシスが失踪した謎を追う、『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収録されている短編小説です。

そこでこのページでは、本作品の結末などの解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

物語について

解説する前に、登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

登場人物

『レディ・フランシスの失踪』の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
シャーロック・ホームズ 私立探偵
ジョン・H・ワトスン 医師
レディ・フランシス・カーファックス 故ラフトン伯爵の直系血族
スーザン・ドブニー レディ・フランシスの元家庭教師
マリー・ダヴィーン レディ・フランシスのメイド
ジュール・ヴィバール マリー・ダヴィーンの婚約者
シュレジンジャー 宣教師
フィリップ・グリーン 閣下
レストレード スコットランドヤードの警部

あらすじ

トルコ式のお風呂に行ったことをホームズにズバリ当てられたワトスンが、気分転換ついでにローザンヌ行きを頼まれる。お金持ちだが孤独なレディ・フランシス・カーファックスが失踪したため、一族や元家庭教師に捜索を頼まれたというのだ。

レディ・フランシスの足取りとしては、三週間前にメイドのマリー・ダヴィーンに50ポンド振り込んだのが最後。泊まっていたホテルを気に入っていたにもかかわらず、怪しい男が訪ねてきて慌てて引き払ったという話だった。

解説と考察

それでは本物語の解説と考察に移ります。

失踪の真相

最終的には命を奪われかけたレディ・フランシスですが、失踪する経緯には男女問題と孤独が絡んでいました。以下はそのレディ・フランシスがたどった行動です。

  1. ローザンヌのオテル・ナシオナル滞在中にフィリップ・グリーンが訪ねてくる
  2. 部屋代が無駄になるのもかまわずにオテル・ナシオナルを引き払う
  3. バーデンに逃げてきてシュレジンジャー夫妻と出会う
  4. マリー・ダヴィーンに50ポンドを渡して別れる
  5. シュレジンジャー夫妻とロンドンへ行く
  6. シュレジンジャー夫妻に捕らわれ埋葬されそうになる

レディ・フランシスが慌ててローザンヌを去った要因はグリーンの訪問でした。グリーンを好いていたものの、レディ・フランシスは粗野な性格を嫌いプロポーズを拒否。逃げるようにローザンヌを後にしたことが、奇しくもシュレジンジャー夫妻に出会うきっかけとなってしまいます。

金目の物を奪ったシュレジンジャー夫妻は、悪事が露見しないようレディ・フランシスの処分を計画。思い付いたのが、一つの葬儀で二人を同時に埋葬してしまう手でした。そこで作らせたのが底の深い特殊な棺。一度は捜査をすり抜け葬儀当日を迎えますが、最終的にホームズがトリックを見破りレディ・フランシスは助け出されます。

ホームズの失敗

一度目に令状なしでシュレジンジャー宅に突入した際、ホームズはレディ・フランシスを見つけることができませんでした。ではなぜホームズは失敗してしまったのか。それはなかなか居場所をつかめなかった焦りが原因だと思います。

状況としては、ロンドンに戻ってきて十日目にようやくシュレジンジャー宅を特定。加えて一刻も早くレディ・フランシスを救助しなければなりませんでした。焦るのも無理はない状況で、いくらホームズといえども慌てると視点が狭まり失敗を招いてしまうことの証ではないでしょうか。

それでもさすがはホームズで、悔しい思いをした翌朝にはレディ・フランシスを見つけ出しワトスンにこんなことを言っています。

起こったときにそれを認識し、修正できる者が偉大なんだ。今回それができたという点では、僕は大いに評価されてしかるべきだと思うんだが。

出典元:角川文庫『シャーロック・ホームズ最後の挨拶(レディ・フランシス・カーファックスの失踪)』コナン・ドイル/駒月雅子訳

確かにその通りですがすごい開き直りようです。この切り替えの早さも、ホームズが偉大であることのゆえんでしょう。

ドラマについて

ジェレミー・ブレットが主役を演じる海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」では、1991年に本物語を放送しました。以下は原作との相違点です。

原作との相違点
  • レディ・フランシスが失踪するまでの経緯
  • ワトスンがグリーンともみ合ったのが海運銀行
  • まさに埋められようとしていたときにレディ・フランシスを救助する
  • シュレジンジャーがワトスンに撃たれる
  • 悲劇的な結末にホームズが落ち込む

前半のレディ・フランシスが失踪するまでの経緯が原作とまったく違います。ドラマでの失踪は、湖水地方にある教会での出来事。その場にはワトスンも立ち会っており、ホームズが新聞や手紙で危機に気づきますがひと足違いでレディ・フランシスはいなくなってしまいます。

結末も微妙に異なっており、特に注目なのがホームズの心情。原作では失敗を認めすぐに修正したことで評価されてしかるべきと言うホームズですが、ドラマでは落胆します。それはレディ・フランシスの命が助かっても精神を病んでしまった結末に、より悲壮感を与えるための演出かもしれません。

感想

シュレジンジャーが考えた二人を一気に埋葬する手は面白い方法だと思いました。まさか一つの棺に二人が入っているなど、通常なら考えもしません。だだこのトリックの難点は、どうしても棺を特注しなければならないので葬儀社に余計な証人を残してしまうことだと思います。

レディ・フランシスがシュレジンジャーに狙われた原因は孤独な境遇でした。ただシュレジンジャーにとって誤算だったのは、ドブニーや一族が捜索を依頼しグリーンが行方を追っていたこと。そういう意味でレディ・フランシスは愛されており、思ったほど孤独ではなかったのかもしれません。

笑ってしまったのが、シュレジンジャーの耳の形状を聞かれたときのワトスンの反応。ホームズが捜査に関して無意味な質問をするはずがないのに無視を決め込みます。しかもその後、「バーデンを離れていて確認できなかった」という始末。その通りだったのでしょうが、ちょっと言い訳っぽいですね。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。