夢(ポアロ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

夢(ポアロ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

アガサ・クリスティのポアロシリーズ『夢』。この物語は、自分を撃つ夢がそのままの形で実際に起こった、『クリスマス・プディングの冒険』に収録されている短編小説です。

そこでこのページでは、「人物相関図」と「トリック」を確認しながら本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

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物語について

解説する前に、最終的な人物相関図あらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

最終的な人物相関図

最終的な人物相関図をまとめると次のようになります。パソコンの場合は画像をクリックして拡大、スマホの場合はピンチアウトしてご覧ください。

相関図

あらすじ

「三時二十八分に窓のところに行って自らを撃つ」。
変わり者で有名な富豪のベネディクト・ファーリーは、毎晩見る同じ夢に頭を抱えていた。

相談を受けたポアロでさえも、まったく意味不明でお手上げ状態。ところが一週間後、夢と同じ状態で命を落としたベネディクトが発見される。

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解説と考察

それでは本物語の解説と考察に移ります。

夢の意味

夢を話した目的は、その通りの出来事が起こったときに「あたかも暗示にかかってやった」と見せかけるためでした。奇妙だけどあり得そう。そう周囲に思わせることで、自ら命を絶つ理由に正当性を持たせようとしました。

実際に手を下しポアロに夢の話をしたのは秘書のヒューゴーで、動機はルイズといっしょになるため。夫であるベネディクトを排除して、遺産とともに幸せを掴もうとしていました。

実現方法

ではどのように夢通りのことを実現したか。以下は夢の内容と実現方法をまとめた表です。

夢の内容 実現方法
三時二十八分 午後は書斎で仕事する習慣を利用
窓のところへ歩いて行く 伸縮自在ばさみで黒猫のぬいぐるみを窓に差し出しておびき寄せる
自らを撃つ 窓から乗り出してきたところを撃つ

三時二十八分にしたのは外の雑音がひどい時間だからで、銃で撃っても聞こえないようにする意図がありました。さらにベネディクトが部屋から出ずに絶命したことの証明として、記者を部屋の前に待たせておきます。

窓のそばまでおびき寄せる方法は若干子供だましな印象を受けますが、相当な猫嫌いだったのでしょう。見事に引っ掛かって身体を乗り出し、ベネディクトは撃たれて命を落としてしまいます。

あとは自分が第一発見者になり、銃に指紋を付けるだけ。密室の中なので、自分で撃ったとしか考えられない状況の完成です。

一つ気になるのは銃創。自分で自分を撃ったときと少し距離があるのとでは、銃創が異なると聞いたことがあります。そこからベネディクト自身が撃ったのではないと特定できると思うのですが、もしかしたらこの時代にその観点は無かったのかもしれません。

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ドラマについて

デヴィッド・スーシェが主役を演じる海外ドラマ「名探偵ポワロ」では、1989年に本物語を放送しました。ストーリーは大まかには同じものの、主に次の追加・変更要素があります。

原作とドラマの相違点
  • 蒸気の確認でベネディクトは窓から顔を出す
  • ベネディクトがパイ会社の社長で工場の式典から始まる
  • 命を落とした時刻が12時28分
  • ポアロが間違えて返した手紙が家主からものになっている
  • 三人の社員が書斎の前で待っている
  • レモンの行動をヒントにして謎が解ける
  • ジョアンナの婚約者であるハーバートが逃げたヒューゴーを捕える

いちばん大きな変更点は、蒸気の確認をするためベネディクトが窓から顔を出すこと。原作では黒猫のぬいぐるみでおびき寄せましたが、社長としてもっともらしい理由になっています。

その方法をポアロが閃くきっかけになったのがレモンの行動です。レモンが窓を開けて教会の時計で時間を確認したことが、さんざん悩んでいたポアロにヒントを与えて謎が解明されました。

お決まりのお笑い要素は、レモンがさんざん文句を言っていたタイプライター。最後にようやく新しいものを買ってくれたのかと思いきや、ポアロはタイプライターではなく時計を買ってきてしまいます。しかも自信満々に…。

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感想

自ら命を絶つ理由に暗示を選んだのは面白いと感じました。ベネディクトがそんな人間ではなかったことが理由でしょうが、逆に「これしかない」という方法に見受けられます。思いついたときはニヤニヤものだったかもしれません。

対してトリックは不確実性が高いと思います。「ぬいぐるみだとバレたら?」「窓から身を乗り出さなかったら?」など、いくつかの偶然をモノにしなければなりません。窓から乗り出して撃つのも、案外難しいのではないでしょうか。

それにしてもなぜポアロに相談しちゃったのか。完全なる人選ミスです。一方、手紙を間違えて渡すという偶然まで味方に付けるポアロは、さすがとしか言いようがありません。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。