車井戸はなぜ軋る犯人ネタバレ解説・感想・あらすじ・相関図

車井戸はなぜ軋る犯人ネタバレ解説・感想・あらすじ・相関図

横溝正史の小説『車井戸はなぜ軋る』。この物語は、ある村の名家の不義が後に悲劇につながっていく、『犬神家の一族』の先駆けともいえる金田一耕助シリーズの短編小説です。

そこでこのページでは、犯人、最終的な相関図など本作品の解説と考察を行います。登場人物とあらすじ以外すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

物語について

解説する前に、本物語の登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

登場人物

本物語の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
金田一耕助 探偵
本位田大三郎 本位田家三代目当主
本位田大助 大三郎の長男
本位田慎吉 大三郎の次男
本位田鶴代 大三郎の長女
本位田梨枝 大助の妻
お槇 大助たちの祖母
本位田庄次郎 本位田家二代目当主
本位田弥助 本位田家初代当主
秋月善太郎 秋月家当主
お柳 善太郎の妻
秋月伍一 大三郎とお柳の子
おりん 善太郎とお柳の娘、伍一の姉
お杉 本位田家の老婢
鹿蔵 本位田家の下男
小野宇一郎 小野家当主
お咲 宇一郎の後妻
小野昭治 宇一郎の息子

あらすじ

K村の名家である本位田家の大三郎に大助と名付けられた子供が生まれる。約1ヶ月前、もう1つの名家で微禄した秋月家にも伍一という子が生まれたが、二重だったことから大三郎の血が入っているのは間違いなかった。

秋月善太郎はショックから車井戸に身を投げ、伍一を生んだお柳も1年後に同様にして命を絶つ。幼い頃は目でしか見分けられなかった大助と伍一も、次第に生活の違いから相似も薄れていった。

昭和21年夏のはじめ、召集を受けていた大助が何の前触れもなく復員。この後、本位田家で悲劇が起こるのだが、末っ子の鶴代の兄の慎吉への手紙に、感想や憶測を含めた顛末が書き記されていた。

ネタバレ解説

それでは本物語のネタバレ解説に移ります。

帰ってきた大助の正体

義眼となって帰ってきた大助の正体は、伍一ではなくやはり本人でした。人が変わったようになったのは、伍一が命を落とす間際の言葉が原因。梨枝の痣のことを聞き、疑惑が募ってしまったのです。

人が変わり大助と伍一を見分ける目が失われたため、お槇、梨枝、鶴代が正体を疑ったのも無理はありません。その疑いに拍車をかけたのが葛の葉の屏風。眼に瞳がない狐が化けた葛の葉が、大助になりすましている伍一の暗示になってしまいました。

もう1つ重なってしまった不運がお杉の落命。災難で崖から落ちてしまったのですが、絵馬を取りに行く際だったので命が奪われたと思われてしまったのです。その後、絵馬は慎吉が回収しお槇に渡していたのですが、正体を確かめる機会がないまま悲劇が起こってしまいます。

犯人と動機

梨枝の命を奪ったのは大助でした。動機は嫉妬心。おりんに慎吉と梨枝が関係を持っていると吹き込まれ、狂気に駆られてしまったのです。

大助は鹿蔵をおどして療養所まで行き、慎吉の命をも奪おうとしました。ところがもみ合っているうちに短刀が刺さり絶命。鹿蔵は大助を本位田家まで運び、ずぶ濡れや泥まみれをごまかすため車井戸に放り込みました。

昭治が下手人役を買って出たのは、慎吉と仲の良い友人だったから。脱獄の身で慎吉に世話してもらっていた恩もあったでしょう。現場に落ちていた義眼を回収し、慎吉をかばおうとしたのです。

最終的な人物相関図

物語の結末、真相が明らかになった上での人物相関図は以下のようになります。

車井戸はなぜ軋るの相関図

感想と考察

伍一とおりんにとっては多くの運も味方しましたが、完璧な復しゅうだと思いました。2人がしたことと言えば、事実ではない話で大助の疑惑を極限まで募らせただけ。それが本位田家に1人残らずという結果になったのだから、2人の長年の恨みは晴らされたと言えるでしょう。

もし、伍一が大助と同じように育てられたらどうなっていたかと考えてみました。おりんから吹き込まれていたものの、伍一自身は本位田家に憧れを持っていたと記されています。したがって不平や怨恨の元は生活の差だけ。それがなければ、大助に梨枝の痣のことなど話さなかったのではないでしょうか。

痣のことを知らなければ、義眼にはなったものの大助は元の性格のまま家に帰ってきたと考えられます。梨枝への不信、家族の疑惑も起こらなかったことでしょう。家柄、家族という枠が、伍一を不幸にし悲劇の一要因になってしまったともいえると思います。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。

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