金縁の鼻眼鏡(ホームズ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

金縁の鼻眼鏡(ホームズ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ『金縁の鼻眼鏡』。この物語は、金縁の鼻眼鏡を持って命を奪われた青年の悲劇が珍しい結末を迎える、『シャーロック・ホームズの帰還』に収録されている短編小説です。

そこでこのページでは、真相など本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

物語について

解説する前に、登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

登場人物

『金縁の鼻眼鏡』の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
シャーロック・ホームズ 私立探偵
ジョン・H・ワトスン 医師
コーラム教授 ヨックスリー・オールド・プレイスの主
ウィロビー・スミス コーラム教授の秘書
マーカー夫人 家政婦
スーザン・タールトン メイド
モーティマー 庭師
スタンリー・ホプキンズ スコットランドヤードの警部

あらすじ

十一月の嵐の晩、まっとうな人はとうにお休みの時刻にスタンリー・ホプキンズ警部が訪ねてくる。世間から孤立した屋敷で命を奪われたウィロビー・スミスの件を、ホームズに相談しに来たのである。

事実そのものは調べがついているものの、最大の謎は動機がまったく見当たらないこと。第一発見者のスーザンによると、スミスは息絶える間際に「先生、あの女です」と言い残したという。

解説と考察

それでは本物語の解説と考察に移ります。

犯人と真相

ウィロビー・スミスの命を奪ったのは、アンナという実はロシア人だったコーラム教授の妻でした。動機がまったく不明だったのは、突発的な出来事だったため。コーラム教授の書斎に侵入したところで見つかってしまい、もみ合って近くにあったナイフで刺してしまったというのが真相でした。

アンナが書斎から盗もうとしていたのは、昔自分が書いた日記や手紙。そこにはコーラム教授の裏切りによって捕まった、革命の同志であるアレクシスを救出できる証拠が書き綴られていました。つまりスミスの絶命という悲劇から、コーラム教授の悪事という別の事実が明らかになったわけです。

スミスは息絶える間際に「先生、あの女です」と言い残していました。これはその日の朝に屋敷への道をアンナに聞かれ、コーラム教授に話していたから。深い意味などなくそのまんまで、コーラム教授へ向けたダイイングメッセージでした。

現場の状況

実際に現場で起きた出来事をもう少し詳しく見ていきたいと思います。以下はアンナが書斎に侵入してから教授の寝室へ行くまでの図です。パソコンの場合は画像をクリックして拡大、スマホの場合はピンチアウトしてご覧ください(図は若干簡略化しています)。

現場の図

コーラム教授がアンナを匿うことにした理由は保身のため。アンナが奪った日記や手紙が明るみになれば、自身の身に危険が迫ると悟ったからです。

少し気になるのは、アンナが廊下を間違えたこと。同じ方向にココヤシのマットが敷いてある似た廊下が二つあることが理由でしたが、アンナは屋敷の見取り図が頭に入っていたはずです。したがってド近眼であっても、角にある廊下のどっちが裏口に通じているかはわかったような気がします。おそらく気が動転していたことも、間違えた要因になったのでしょうね。

ドラマについて

ジェレミー・ブレットが主役を演じる海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」では、1994年に本物語を放送しました。以下は原作との相違点です。

原作との相違点
  • ワトスンの代わりにマイクロフトが登場
  • スミスの予定表に「アビー 7-30」という記述がある
  • ホームズが自分のマフラーを使って血痕を隠す
  • アビゲール・クロスビーという婦人参政権を訴える女性に疑いがかかる
  • アレクシスがアンナの兄
  • コーラム教授が最後に命を奪われる

最大の違いは、ワトスンの代わりにマイクロフトが登場すること。ワトスンが不在なのは嵐で診療所に患者があふれているという理由ですが、実際はエドワード・ハードウィックが映画の撮影でスケジュールが合わなかったから。ホームズはワトスンがいなくていじけるあまり、「処方されるのはすりおろしりんごだから患者が哀れ」などと発言する始末でした。

マイクロフトの登場により、原作ではホームズがしていたいくつかの推理を代わりに披露しています。金縁の鼻眼鏡や傷跡から読み取れること、灰によるトラップなど。さらにホームズのあの名言が、父譲りのものだったことが明らかになります。

感想

ワトスンが冒頭で語っている通り、動機のわからない悲劇から珍しい結末に行きつく面白い作品でした。突発的に命を奪うとドラマがないですが、この作品にはそのさらに奥の根深い理由がある。もしコーラム教授がロシア人であることを推理するならば、人里離れた土地に数年前に引っ越してきたことがヒントになるでしょうか。

眼鏡一つでいろいろなことがわかるのも興味深かったです。鼻の形や目の位置、そこから発展して姿勢や額のしわまで読み取れるのはなるほどと思いました。「僕にできるのはせいぜいこれくらい」と言ってすごく詳しい情報を提供するのも、ホームズらしかったです。

それにしてもコーラム教授は噓が下手。明らかに真実を別の方向に持っていこうとしている意図がバレバレでした。捜査をかく乱したい気持ちがそうさせたのでしょうが、もう少し状況を汲んで証言すればよかったのにと思います。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。