三人ガリデブ(ホームズ)のネタバレ解説・あらすじ・感想
アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ『三人ガリデブ』。この物語は、ガリデブという珍しい苗字を持つ人物の捜索を依頼される、『シャーロック・ホームズの事件簿』に収録されている短編小説です。
そこでこのページでは、結末など本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。
物語について
解説する前に、登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。
登場人物
『三人ガリデブ』の登場人物は以下です。
登場人物名 | 説明 |
---|---|
シャーロック・ホームズ | 私立探偵 |
ジョン・H・ワトスン | 医師 |
ジョン・ガリデブ | 弁護士 |
ネイサン・ガリデブ | 収集家 |
ハドスン夫人 | ベーカー街221Bの女主人 |
あらすじ
大富豪のアレクサンダー・ハミルトン・ガリデブが、カンザス州始まって以来の妙な遺言状を残す。自分と同じ姓を持つジョン・ガリデブに、全財産の三分の一を分け与えるというのだ。
ただし条件は「ガリデブ」という姓を持つ男をもう二人見つけること。ホームズはジョンが見つけたネイサン・ガリデブから、もう一人を見つけるために相談を持ち掛けられたのである。
解説と考察
それでは本物語の解説と考察に移ります。
真相
ガリデブ姓を見つければ500万ドルなんていうおいしい話は、ジョン・ガリデブの作り話でした。目的はネイサン・ガリデブを外出させること。その隙に家の地下に隠されていた紙幣偽造の設備を手にするためでした。
そもそもジョン・ガリデブというのも偽名で、本当は「エヴァンズ」の名で通っているアメリカで三人の命を奪った凶悪な人物。ロンドンに来てからもロジャー・プレスコットという人物を撃ち、約六年間収監されていました。実はこのプレスコットが貨幣偽造者で、ネイサンが住んでいる家の地下を製造所としていたのです。
ジョンは釈放後に設備を手に入れようとしたものの、すでにネイサンが居住していました。しかもネイサンはほとんど家から出ない変わり者。苦肉の策として珍しい「ガリデブ」という姓を利用し、お金で釣って外へ連れ出そうとしたというのが真相でした。
ジョンの計画
発想はとても面白い作戦でしたが、ネイサンがホームズに相談してしまったのが完全なる誤算。ホームズにされた質問により、次のようなボロがどんどん出てきてしまいました。
- 新聞に広告など出していないことがバレる
- ライサンダー・スタールという人物でかまをかけられる
- アメリカ式の単語で偽の広告だとバレる
- 警察の介入を気にしている
詳しく言及されていませんが、そもそもアレクサンダー・ハミルトン・ガリデブなんていう大富豪もいなかったのでしょう。スピードを意識したあまり細かい設定をおろそかにしたのがジョンの敗因だと言えます。ネイサンが住んでいる限り設備が目に触れることはないので、もっと緻密な計画を立てても良かったかもしれません。
一つ気になるのが、設備を発見してどうするつもりだったのかということ。おそらく持ち運べるような規模でもないでしょうし、隠れて住むこともできないはず。結局ネイサンをどうにかするつもりだったら、もっと別の計画を考えた方が良かった気もします。
感想
ガリデブ姓に遺産をプレゼントなんて変てこりんな話で、面白く読むことができました。冒頭でワトスンが記述している通り、まさに悲劇でもあり喜劇でもある。本作は話が特異だったがゆえにホームズの気を引いてしまったと言えるかもしれません。
また、ワトスンがジョンに撃たれたときのホームズとのやり取りが印象的でした。ワトスンは今までの奉仕はこのときのためにあったような考えを呼び起こしますし、ホームズは激情に駆られて復讐をいとわない発言をします。ワトスンへの想いが感じられる言葉ですが、気持ちの大きさゆえにホームズでさえも人の命を奪ってしまう可能性があることが垣間見えた瞬間でした。
笑ってしまったのが、ホームズがジョン・ガリデブの正体をワトスンに話したときの次の発言。
そうだった。僕とちがって君は携帯用のロンドン監獄分類報を頭のなかへ入れとくのが商売の一部じゃなかったっけ。
出典元:新潮文庫『シャーロック・ホームズの事件簿(三人ガリデブ)』コナン・ドイル/延原謙訳
そんなのホームズだけでしょう。
少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。
その他のホームズ作品のネタバレ解説はコチラから探せるので、良かったらご参照ください。
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