マギンティ夫人は死んだネタバレ解説・あらすじ・相関図・感想

アガサ・クリスティのミステリー小説『マギンティ夫人は死んだ』。この物語は、悪人特有のうぬぼれがない人物が逮捕されたことでポアロが警視から再捜査を頼まれる、ポアロシリーズの長編小説第二十四作目です。
そこでこのページでは、「人物相関図」や「物語のポイント」を確認しながら、本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。
物語について
解説の前に、最終的な人物相関図とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。
最終的な人物相関図
以下は、本作品の登場人物の最終的な相関図です。パソコンの場合は画像をクリックして拡大、スマホの場合はピンチアウトしてご覧ください。

あらすじ
◆ スペンス警視の疑念
ポアロが満足な食事の後で空白な時間に虚しさを感じながらアパートに帰るとスペンス警視が待っていた。雑役婦のマギンティ夫人が命を奪われた件で間借人のジェイムズ・ベントリイが逮捕されたのだが、彼がやったとはどうしても思えないというのである。
根拠は悪人が常に持つうぬぼれがないからだけで、挙がっている証拠はベントリイにとって不利なものばかり。ポアロはスペンス警視の再捜査の依頼を受け、マギンティ夫人の住んでいた村ブローディニーに向かった。
◆ 日曜の友
なかなか手掛かりを見つけられずにいたポアロだったが、マギンティ夫人の持ち物からページが切り取られた新聞「日曜の友」を見つける。かつて悲劇に見舞われた4人の女性、エヴァ・ケイン、ジャニス・コートランド、リリー・ガンボール、ヴェラ・ブレイクが今どこにいるかという内容だった。
マギンティ夫人が働きに出ていた家の誰かがこの4人の女性、あるいは子どもなのか。そうスペンス警視に推論を話した帰り、ポアロは駅のホームで何者かに押され命を奪われそうになった。
◆ アップワード夫人
パーティー後に寄ったアップワード家で、ポアロは集まった人たちに「日曜の友」に掲載された女性たちの写真を見せる。アップワード夫人が何かに気付いたようだったが、ポアロが警告しても何も話そうとしなかった。
翌日、マギンティ夫人の命を奪った凶器のシュガーハンマーが、ポアロが泊まっていたロング・メドウズの雑多な棚から見つかる。一方でその夜、芝居から帰ってきたオリヴァ夫人とロビン・アップワードが、首を絞められ息絶えているアップワード夫人を発見した。
◆ 女性
現場の居間には指紋はなかったものの、口紅が付いたカップが残されていた。加えてオリヴァ夫人とロビンが高価な香水の匂いを嗅いでいたため、女性による凶行と考えられた。
当初はデアドリイ・ヘンダースンだけだと思われたが、イヴ・カーペンターとシェラア・レンデルもアップワード夫人に電話で呼び出されていたことが判明。ポアロは関係者を呼び集め、子どもの遊戯の唄を取っ掛かりにして真相を語りだす。
解説と考察
それでは本物語の解説と考察に移ります。
犯人と動機とエヴァケイン
マギンティ夫人とアップワード夫人の命を奪ったのはロビン・アップワードでした。ロビンはアップワード夫人の本当の息子ではありません。本名はイヴリン・ホープといい、エヴァ・ケインの息子だったのです(「日曜の友」に書かれていた娘というのは誤り)。
動機は今の生活を守るため。マギンティ夫人は掃除中に見つけた写真がエヴァ・ケインだと知り、アップワード夫人に話そうとしていました。ロビンはそれを阻止しようとしてマギンティ夫人の命を奪ったのです。ただしマギンティ夫人が考えていたことと事実は異なり、アップワード夫人こそがエヴァ・ケインだと思っていました。
マギンティ夫人の排除でアップワード夫人に自分の母の正体を知られることなく時は過ぎましたが、ポアロが写真を見せてしまいます。やはり今の生活を守りたいロビンは、アップワード夫人を亡き者にして遺産を相続しようと計画。口紅や香水など残っていた女性に関する証拠は偽装で、呼び出しておいたデアドリイ、イヴ、シェラアなど女性の凶行に見せかけ、男の自分には疑いがかからないようにする算段だったのです。
その他の真相
その他の人物の何人かにも、以下の隠していた事実がありました。
- モード・ウィリアムズ:クレイグ夫妻の娘
- イヴ・カーペンター:未亡人ではなく遊び人のダンサーだった
- ウェザビイ家:遺産を持っていたデアドリイを手放さないようにしていた
- レンデル医師:最初の妻を亡き者にしていた
モードはクレイグ夫妻の娘で、アップワード夫人が家族を破滅させたエヴァ・ケインだと思っていました。マギンティ夫人の命を奪ったのもアップワード夫人だと思い訪れますが、すでに息絶えている姿を発見。エドナが目撃したという金髪の女性はモードだったのです。
ポアロをホームから突き落とそうとしたのはレンデル医師でした。理由は最初の妻を亡き者にした疑惑を、ポアロが探っていると考えたから。真実はわかりませんが、潔白であればそんなことはしないと思うのでレンデル医師はやはりクロだったのでしょう。
ドラマ「名探偵ポワロ」について
デヴィッド・スーシェが主役を演じる海外ドラマ「名探偵ポワロ」では、2008年に本物語を放送しました。以下はキャストと、原作との主な相違点です。
キャスト
登場人物名 | 役者名 |
---|---|
エルキュール・ポワロ | デヴィッド・スーシェ |
アリアドニ・オリヴァ夫人 | ゾーイ・ワナメイカー |
ロビン・アップワード | ポール・リース |
ジェームズ・ゴードン・ベントリー | ジョー・アブソロム |
スペンス警視 | リチャード・ホープ |
レンデル医師 | サイモン・シェパード |
シーラ・レンデル | アマンダ・ルート |
ローラ・アップワード | シアン・フィリップス |
モード・ウィリアムズ | サラ・スマート |
スイーティマン | ルース・ジェメル |
モーリン・サマーヘイズ | ラケル・キャシディ |
ジョン・サマーヘイズ | リチャード・ディレイン |
イヴ・カーペンター | メアリー・ストックリー |
ガイ・カーペンター | リチャード・リンターン |
ベッシー・バーチ | エマ・エイモス |
ジョー・バーチ | ビリー・ジェラティ |
原作との主な違い
- ウェザビイ家が登場しない
- バーチ夫妻がマギンティ夫人の家に住んでいる
- ポワロがブリーザー・アンド・スカットルに行くと閉店時間だった
- ポワロがオリヴァ夫人の車でアップワード家へ行く
- 出てくる悲劇の女性が2人
- イヴが踊り子であることをモードが調べてくる
- ジョー・バーチが不倫している
- ポワロを駅のホームで押したのがレンデル夫人
- ベントリーとモードが結ばれる
黒幕や動機、凶行のタイミングなどロビンに関することは原作通りです。ドラマで異なる大きな点はウェザビイ家の人間が丸々登場しないこと。これによりアップワード夫人を訪ねる女性がサマーヘイズ夫人になっていたり、最後にベントリーと結ばれるのがモードに変わっています。
もう1つ大きな変更点は、バーチ夫妻が亡くなったマギンティ夫人の家に住んでいること。原作では序盤しか出てこなかった2人が物語に少なからず関与してきます。そして終盤、ジョー・バーチは不倫をしているという事実が明らかになりました。
本作で使われたロケ地の中で特定できた場所をまとめておきます。良かったらご参考ください(マギンティ夫人の家はストリートビューで確認可。ロング・メドウズとカーペンター家はできないので、確認したい方はお手数ですが下記表中の英語の名前で検索してください。カーペンター家は座標を「Google Earth」で打ち込んでも確認できます)。
登場シーン | ロケ地 | 地図(座標) |
---|---|---|
マギンティ夫人の家の外観 | コルストロープ・ファーム | Googleマップ(51.587080, -0.871925) |
ロング・メドウズ(サマーヘイズ家)の外観 | ハープスデン・コート(harpsden court) | Googleマップ(51.521407, -0.900592) |
カーペンター家の外観 | セント・アンズ・コート(st anne’s court, chertsey) | Googleマップ(51.395712, -0.523896) |
感想
本作でいちばん印象に残っている要素は写真を持っている理由の話です。美しいときを思い出すための虚栄、我が子を思い出すための感傷、憎しみを忘れないための復讐。1つのとある行動についての分析はとても興味深かったです。もしかしたら虚栄の逆、醜い自分を忘れず奮い立たせるような所持の仕方もあるかもなとは思いました。
やられたなと思ったのは、エヴァ・ケインの子どもが娘ではなく息子だったという点です。「日曜の友」の内容の信ぴょう性については、ポアロがいくつか指摘していました。したがって当然まだ誤りがあると考えられるのですが、もうないと勝手に思い込んでしまいました。
やはりすごかったのがオリヴァ夫人の直感。今回もある意味で見事、悪人を的中させました。レンデル医師と思ったのは、ポアロを突き落とした翌日で大いに漂っていた怪しい雰囲気を感じ取ってのことかもしれません。
少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。
その他のポアロ作品のネタバレ解説はコチラから探せるので、良かったらご参照ください。
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