エジプト墳墓の謎(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

エジプト墳墓の謎(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・感想

アガサ・クリスティーのポアロシリーズ『エジプト墳墓の謎』。この物語は、エジプト墳墓の発見をきっかけに立て続けに命が失われる、『ポアロ登場』に収録されている短編小説です。

そこでこのページでは、真相など本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

物語について

解説する前に、登場人物とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

登場人物

『エジプト墳墓の謎』の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
エルキュール・ポアロ 私立探偵
アーサー・ヘイスティングス ポアロの友人
ジョン・ウィラード 考古学者
レディ・ウィラード ジョンの妻
ブライナー エジプト研究のスポンサー
ルパート・ブライナー ブライナーの甥
トスウィル 大英博物館の博士
シュナイダー メトロポリタン美術館の博士
ロバート・エイムズ 医師
ハッサン ジョンの従者
ハーパー ブライナーの秘書
ガイ・ウィラード ウィラード家の息子

あらすじ

ジョン・ウィラード卿とブライナーが、影の薄い古代エジプトの王の一人・メンハーラ王の墓室を発見する。世界中の関心を集める大発見だったが、まもなくウィラード卿が心臓発作で命を落としてしまった。

その二週間後、今度はブライナーが急性の敗血症、さらにはブライナーの甥が自らを撃ち絶命。超自然現象さえ疑われる中、レディ・ウィラードが息子を心配してポアロに事実関係の調査を依頼する。

解説と考察

それでは本物語の解説と考察に移ります。

真相

立て続けの落命は、もちろん超自然現象などではありませんでした。命を奪っていたのは医師のエイムズ。ルパート・ブライナーが相続する、叔父の多額の遺産が動機でした。

エイムズが利用したのが、超自然現象を信じる人間の本能です。迷信が噂される中で立て続けに悲劇が起こったら、人間はどうしても自然現象と結び付けてしまうもの。最初のウィラード卿の落命は偶然でしたが、エイムズはこれをチャンスと見て迷信を盾にできると考えたのです。

さらには医師という職業も利用。ブライナーには病原菌を植え付け、甥のルパートにはもう先が短いと噓を伝えて自ら命を絶つよう仕向けました。ただしシュナイダーだけは謎。真実は不明ですが、命を奪うことに成功すると繰り返してみたい強い欲望に駆られるというのを、ポアロは理由の一つに挙げています。

古代エジプト第八王朝

作中に出てきた古代エジプト第八王朝は、紀元前22世紀頃に存在したと見られている本当に衰退していた時代です。ただし発掘された情報源が少ないため、わかっていることはほとんどありません。クリスティはこの未知なる時代に着目して、第八王朝を題材に選んだのでしょう。

第八王朝にはカカラーという王(ファラオ)が存在していたことが確認されています。裏付けとなったのが、発見された小さなピラミッド。これはサッカラ(エジプトの巨大な埋葬地)で建設された最後のピラミッドだとみなされています。

ウィラード卿とブライナーが見つけた墳墓のメンハーラ王は、クリスティの作った架空の人物でしょう。しかし未知な部分が多いことを考えると、実在していた可能性も否定はできません。そしてもしメンハーラ王がカカラーより後の在位で、かつ墳墓がピラミッド(作中に記載はない)だとしたらどうなるでしょうか。墳墓は最も新しいピラミッドであるとされ、世紀の大発見だったということになります。

ドラマについて

デヴィッド・スーシェが主役を演じる海外ドラマ「名探偵ポワロ」では、1993年に『エジプト墳墓のなぞ』というタイトルで本物語を放送しました。以下は原作との主な相違点です。

原作との相違点
  • ウィラード宅でポワロがガイに会う
  • ヘイスティングスがニューヨークにいてルパートに会う
  • ハッサンがヘイスティングスにガイを立ち去らせるよう言う
  • エイムズが体調不良のフリをする
  • ポワロがエイムズのテントに侵入しヘイスティングスが見張る
  • エイムズが命を絶たない
  • レモンが手紙でバイオグラフィーをバイオグと略そうとする
  • ヘイスティングスとレモンがお告げ遊びをしている

物語は原作に則っていますが、ところどころ追加・変更点があります。序盤ではニューヨークにいるヘイスティングスがルパート宅を訪問。みすぼらしい感じを目の当たりにした翌日、命を絶っているルパートを発見します。

エイムズが体調不良を起こすシーンも追加。ポワロに疑いの目を向けられないようにすることが理由でしょう。しかしそんなことお構いなしにポワロはエイムズのテントに侵入。見張りに立ったヘイスティングスは、ただの変な奴だと思われる始末でした。

レモンの猫が亡くなったというエピソードもあります。落ち込んでいたレモンが行なったのは、ヘイスティングスとのお告げ遊び。メンハーラ王のお告げがあったとヘイスティングスが騒いでポワロに怒られますが、最後は猫の像をプレゼントされ迷信の力で元気を取り戻します。

感想

ポアロが最後に言っていた通り、超自然現象を信じる力は恐ろしいと感じました。信じてしまったらどんな悲劇が起こっても超自然現象で片付けられてしまう。ワクワクする一面もありますが、信じすぎると本当に大事なことを見落とす可能性も多大にはらんでいると思います。

エイムズはルパートに、「このまま病気が進行するととんでもないことになる」というような深刻な診断を下したのでしょう。そうでなければルパートのような人間が命を絶つとは思えません。ただ絶望はさせたものの、不確定要素だったのは事実。アメリカに帰って時間が経ち、何でもないと気づくことだってあり得たでしょう。

船嫌いのポアロが、自ら現地に行くと言い出したのは驚きました。ラクダに乗って喚き散らし、ロバに乗り換える哀れな様子も笑えます。「ざっと書くにとどめておこう」とヘイスティングスは記載していますが、ポアロの恥ずかしい姿を伝えるのには十分でした。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。