顔(松本清張の小説)のあらすじ・ネタバレ結末・感想

顔(松本清張の小説)のあらすじ・ネタバレ結末・感想

松本清張の小説『顔』。この物語は、ある劇団員が映画出演をきっかけに、かつて命を奪った女といるところを見られた唯一の男を消そうと目論む短編小説です。

そこでこのページでは、結末など本作品のネタバレ解説を行いました。一部ネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

登場人物

『顔』の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
井野良吉 劇団「白楊座」の団員
石岡貞三郎 井野とミヤ子がいるのを目撃した男
A 劇団「白楊座」の団員
Y 劇団「白楊座」のマネージャー
石井 映画監督
山田ミヤ子 初花酒場の女給、井野が密会していた女性
田村 刑事部長

あらすじ

有名な映画監督に演技が認められ、劇団「白楊座」に属する井野良吉の映画出演が決まる。有名になるチャンスを手にした井野だったが、同時に破滅的な不安が心を襲った。

演技とニヒルな顔つきが好評を博し、新たに撮る映画で多くの場面に出る重要な役を手にする。つまり、あの男に顔を見られる可能性が非常に高くなった。

男の名は石岡貞三郎。かつて妊娠してジャマになった山田ミヤ子の命を奪う際、山陰線の汽車の中で一緒にいるのを見られた男である。

名声と金、幸せをつかむためには石岡という不安を取り除くしかない。井野は石岡の命を奪う決心をした。

結末(ネタバレ)

井野は石岡の命を奪うため、次の計画を立てました。

  1. ミヤ子といた男を見つけたと手紙を書いて京都に呼び出す
  2. 京都駅の待合室で石岡と待ち合わせる
  3. 電車で坂本に行き日吉神社近くのアパートへ
  4. 男は不在だと言い比叡山に誘う
  5. ケーブルに乗り根本中堂の方に行って茶店で飲み物を買う
  6. 人のいない黒谷青龍寺の方へ
  7. 木立の中で休憩し飲み物に青酸カリを入れて命を奪う

一方の石岡は、なんと井野の顔を覚えていませんでした。そこに男を確認してほしいと手紙が来たため警察に相談。伏せていたにもかかわらず石岡が目撃者だということ、移転先の住所まで知っていたため、警察は手紙の差出人を怪しみます。知っているはずのない情報を、井野はうかつにもさらけ出してしまったのです。

警察の同行のもと、石岡は京都へ向かいました。待ち合わせ時間まで少し観光し、昼ご飯に京名物料理「いもぼう」を食べようとお店に入ります。そこでまさかの井野と相席しましたがまったく気づかず。井野は顔を覚えてなかったと確信し、計画を実行せず東京に戻ります。

しばらくして石岡は映画を観に行き、井野がミヤ子といた男だと悟りました。窓の方を見て横顔を見せているシーンが、ミヤ子と会ったときに見た男と重なったからです。

感想・考察

二転三転し、しかも笑ってしまうような展開で面白かったです。石岡が井野の顔を覚えていなかったことが意外な展開で、井野がそれに気づいて何もせずに帰るも、結局映画を観て石岡が気付いてしまう。井野にはカット割りをどうすることもできませんが、最初に怖れていた映画で顔が割れる結末も皮肉なものです。

1つ気になったのは、井野がミヤ子の命を奪った温泉津での目撃証言がなかったのかということ。細心の注意を払っていたと記述がありますが、ミヤ子は温泉旅行で少なからず浮かれていたと思うのです。また1泊してもいますし、目撃証言が少しは出てきても良いような気がします。

比叡山など、実際の地名が出てくるところも楽しかったです。地図で井野の計画立案までのルートをたどったりしました。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。

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