張込み(松本清張の小説)のネタバレ結末・あらすじ・感想

張込み(松本清張の小説)のネタバレ結末・あらすじ・感想

松本清張の小説『張込み』。この物語は、ある容疑者が会いに来るかもしれない元交際相手を1人の刑事が監視する短編小説です。

そこでこのページでは、どのような結末を迎えたかなど本作品のネタバレ解説を行いました。一部ネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

登場人物

『張込み』の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
柚木 刑事
横川さだ子 石井久一の元恋人、横川仙太郎の妻
石井久一 容疑者、土建業者の飯場にいる土工
山田 石井久一の共謀者
横川仙太郎 横川さだ子の夫
下岡 刑事
横川隆一 横川家の長男
横川君子 横川家の長女
横川貞次 横川家の次男

あらすじ

一ヶ月前、ある重役宅でお金が奪われ主人が亡き者にされる悲劇が発生する。捜査は難航していたが、偶然にも職務質問に引っかかった山田という男が賊だと判明し逮捕した。

山田は石井久一という仲間と押し入ったと自白。石井は山口県の故郷に帰りたい、九州にいる昔の女の夢をよく見ると話していたという。そこで下岡が山口の故郷、柚木が女のいる九州に出張することとなった。

柚木は石井の昔の女・さだ子のいる横川家に到着。斜め向かいの旅館「肥前屋」で、横川家を見張ることにした。

ネタバレ

それでは、本作品の結末までを見ていきましょう。

結末まで

柚木が張り込みを続けてわかったのは、さだ子が単調な日々を繰り返していることでした。しかし5日目に変化が訪れます。集金と物売りの男が横川家を訪問し、さだ子がいつもと違う格好で外出したのです。

一度は見失うも、柚木は川北温泉の雑木林の用水池でさだ子と石井を発見。そこで見たのは、疲れて情熱を感じさせなかったさだ子が、別人のように解放された姿でした。

地元警察の助けを借り、松浦館という旅館で石井を逮捕。柚木はさだ子に逮捕を伝え思いました。さだ子は情熱など微塵もない、単調な生活の中に戻らなければならないと。

S市はどこ?

地名として出てくる「白崎」「草刈」「川北温泉」はすべて架空です。そこで横川家があったS市はどこなのかについて考えたいと思います。まず、九州でサ行の名前の市は以下です。

県名 市名
佐賀県 佐賀市
長崎県 佐世保市、島原市、西海市
大分県 佐伯市
宮崎県 西都市
鹿児島県 川内市、薩摩川内市、曽於市、志布志市

物語の最初の方で、門司から3時間電車を乗り継ぐ場所と説明がありました。この移動時間のヒントを考慮すると、佐賀県佐賀市の一択に絞られます。したがって川北温泉は、名前も似ていますし川上峡温泉がモデルと考えてよさそうです。

1958年に公開された映画では、S市を佐賀県佐賀市に設定し実際に撮影も行われました。なお、九州に川北温泉はありませんが、石川県と北海道に同名の温泉が存在しています。

感想・考察

張込みを通して、さだ子の生活事情がわかっていくところに面白さがあるのでしょう。だからこそ柚木は服装の違いに気づいてすぐに行動できましたし、反対に割烹着と市場を結びつけ誤った判断もしてしまいました。

そして一番の考えどころは、さだ子の幸せについてです。石井の誘いに応じたのは、単調な日々に不満を抱えていたということ。つまりこの時のさだ子の心情は、たとえ悪人と一緒であっても今の生活から逃れたいと思っていたわけです。

大勢の人にとっては正義でも、ある1人にとっては不幸なことはたくさんあります。柚木は刑事としての職務をまっとうしましたが、最後にさだ子に同情していました。柚木のようにさだ子に感情移入すると、嫌な気持ちで終わる作品になっていると思います。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。

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