アクロイド殺しは盲点があった!相関図・アリバイ表でネタバレ解説

アクロイド殺しは盲点があった!相関図・アリバイ表でネタバレ解説

ミステリーの女王と呼ばれたアガサ・クリスティ。彼女が残した数多くの作品の中でも、『アクロイド殺し』は「フェアかアンフェアか」の議論を巻き起こした不朽の名作です。

そこでこのページでは、「アリバイ表」や「最終的な人物相関図」を用いて、本作品の解説と考察を行います。もちろんネタバレありなので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

物語について

考察をする前に、まずは物語のおさらいをしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。

主な登場人物

■ エルキュール・ポアロ

本物語の主人公。シェパード家の隣に越してきた元探偵。小柄で卵型の顔、跳ね上がった口ひげが特徴。性格はとても几帳面。おしゃれで気品がある。

■ ジェームズ・シェパード

物語の語り手。村にある診療所の医師。キャロラインという8つ上の姉がいる。

■ ロジャー・アクロイド

キングズ・アボット村の中心人物で、ファンリー・パーク荘の主。荷車の車輪製造で大儲けし、多大な財産を所有。赤ら顔で物腰が柔らかい。

■ ラルフ・ペイトン

ロジャー・アクロイドの義理の息子。身長6フィート(183cmくらい)の美青年。わがままだが意志薄弱。

■ セシル・アクロイド

ロジャー・アクロイドの弟の妻。冷ややかで打算的な性格。痩せていて淡青色の目を持っている。

■ フロラ・アクロイド

セシル・アクロイドの娘。母親同様に打算的。色白で金髪、碧い目の美人。

■ ヘクター・ブラント

猛獣狩りの名人でロジャーの友人。無表情で口数が少ない。体つきはがっしりしていて、灰色の目を持っている。

■ ジェフリー・レイモンド

ロジャーの秘書。実直で純真。陽気な性格でたまに空気が読めないことも。

■ パーカー

ファンリー・パーク荘の執事。小太りでずる賢い。

■ エリザベス・ラッセル

ファンリー・パーク荘の家政婦。いつも厳しい目つきで唇を固く結んでいるので、雰囲気は近づきがたい。黒髪で背の高い美人。

■ アーシュラ・ボーン

ファンリー・パーク荘の小間使い。しっかり者でおとなしい。背が高くて、茶髪を首筋の後ろで固く束ねている。

■ キャロライン・シェパード

ジェームズ・シェパードの8歳上の姉。ゴシップ好きで、情報を集めるのにも広めるのにも長けている。

あらすじ

◆ はじまり

仲の良いロジャー・アクロイドから「話さなければならないことがある」と言われたジェームズ・シェパードは、屋敷に招待される。話の内容は、「今朝亡くなったファラーズ夫人が何者かにゆすられていた」というものだった。すると、そのファラーズ夫人からすべてを告白した最後の手紙が届く。ロジャーが1人で読みたいと言ったのでジェームズは帰宅し、寝ようとした矢先、ロジャーが亡くなったという電話を受ける。

◆ 調査開始

屋敷に駆け付けたジェームズは、鍵のかかった部屋を破り息絶えているロジャーを発見。警察は関係者に対して事情聴取を行う。翌朝、フロラ・アクロイドがジェームズのもとを訪ねてきて、村に引っ越してきたエルキュール・ポアロに調査を依頼することを提案。ポアロは承諾し、調査を開始する。

◆ 関係者の持っている隠しごと

ポアロは独自の観点で関係者から話を聞き、さまざまな証拠品を発見する。そして関係者を集めたパーティーを催して、全員が持っている隠しごとを明らかにすると宣言。すると、ひとりずつポアロに抱えている隠しごとを告白していくのだった。

◆ 解決

関係者の告白とさまざまな証拠品からすべてを論理立てたポアロは、関係者を自宅に招待。事の真相を語っていく。

真相と考察

ここからは、「物語の真相」「トリックや心理描写の考察」をしていきます。まだ本作を読んでいない方は、ネタバレとなりますので十分にご注意ください。

最終的な登場人物の相関図

最終的な登場人物の相関図は以下のようになります(パソコンの場合は画像をクリックして拡大、スマホの場合はピンチアウトしてご覧ください)。

最終的な人物相関図

関係者の隠しごと

本作品のキーとなる「関係者が持っていた隠しごと」を追ってみましょう。この隠しごとを念頭に置いて、各関係者の証言や行動の意図を紐解いてみます。

セシル・アクロイド

セシル・アクロイドの隠しごとは次の3つでした。

セシル・アクロイドの隠しごと
  • お金に困っていたこと
  • 遺言書を勝手に見ようとしたこと
  • 銀貨を取り出そうとしたこと

ヒステリックな性格のセシル・アクロイドは、その言動で推理をかき乱す役割を担っています。しかし正直なところ、あまり本筋とは関係のない人物。ジェームズ・シェパードのアリバイトリックにも関与していないし、ほかの人に絡んだ行動もほとんどありません。

唯一着目すべきことを挙げるとすれば、銀貨を取り出そうとしたことでラッセルが銀卓の蓋を閉めなければならなくなったことでしょうか。この行動によって、ジェームズ・シェパードに短剣を使うきっかけを与えてしまったのですから。

ジェフリー・レイモンド

ジェフリー・レイモンドの隠しごとは、以下の1つだけでした。

ジェフリー・レイモンドの隠しごと
  • 借金を抱えていること

これ自体には、何の関わりもありません。ただただ、40ポンドがなくなっていたから言い出しづらかっただけなのです。

実直で純真な性格のレイモンドが持っていた情報の中で着目すべきは、「21時半にロジャー・アクロイドの声を聞いたこと」「ロジャー・アクロイドが100ポンドの小切手を現金に換えたと知っていたこと」。前者はアリバイトリックにおいてキーとなる重要な証言ですし、後者はフロラ・アクロイドがくすねることになったお金だからです。

パーカー

ポアロに直接「何かを隠している」と言われていないパーカー。しかし次の隠しごとがありました。

パーカーの隠しごと
  • エラービー少佐を脅迫して大金をせしめていたこと
  • ロジャーの部屋に3回脅迫のネタを探りに行ったこと

小心者でこずるいパーカーの行動がなければ、事態はややこしくなっていなかったと言っても過言ではありません。特にフロラ・アクロイドを書斎の前で目撃していなければ、彼女に嘘の証言をさせることもなかったでしょう。ある意味、性格にともなっています。

そんなパーカーですが、ロジャー・アクロイドの書斎に関しての空間把握能力がハンパない。警察が来る前と後でイスの位置が変わっていることに気づくという大活躍を見せます。ただ、その能力があれば、録音機がなくなっていることに気づいても良さそうなものですが…。

フロラ・アクロイド

フロラ・アクロイドの隠しごとは次の3つでした。

フロラ・アクロイドの隠しごと
  • ロジャーの寝室からお金を盗んだこと
  • 書斎から出てきたふりをしたこと
  • ラルフを愛していなかったこと

フロラはキーパーソンの1人だと思います。なぜなら、お金を盗んだことがバレたくなかったがために書斎から出てきたふりをして、「21時45分にロジャーが生きている」というとんでもない証言をしてしまったのですから。

これにはジェームズ・シェパードも驚いています。

フロラが九時四十五分に生きている伯父に会ったと証言することが前もってわかっていたら、私としてももっと別の方法があったはずだ。あの証言には、なんとも言えないほど困惑した。

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『アクロイド殺し(27 弁明)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

確かに前もってわかっていたら、変な偽装工作などせずまっすぐ家に帰って連絡を待てばよいだけですからね。鉄壁のアリバイを手にすることができます。唯一不安なことは、書斎のドアが開けっ放しになってしまうことでしょうか。

また、フロラがずっと真実を黙っていたことによって、ラルフの嫌疑がどんどん深まっていくという効果も。まさに、ジェームズ・シェパードにとっては願ったり叶ったりの状況になっていきます。

ヘクター・ブラント

ヘクター・ブラントの隠しごとは1つだけでした。

ヘクター・ブラントの隠しごと
  • フロラを好いていること

この隠しごとによって捜査があらぬ方向に行くということはありません。デイヴィス警部がフロラにロジャーが亡くなったことを告げたときに手を握ったり、金魚池で話したりしてアピールしただけです。

ブラントで注目すべきは、「21時半にロジャーの声を聞いたこと」「植え込みの中に消えていった女性(アーシュラ・ボーン)を見たこと」。前者はレイモンドと同様アリバイトリックに関わる重要な証言ですし、後者はアーシュラがラルフと会っていたことにつながります。

いずれにしても、フロラと結ばれてよかった。ポアロも次のようなことを言っています。

なるほど―恋は盲目と言いますからね

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『アクロイド殺し(19 フロラ・アクロイド)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

言葉の真意が、フロラの気持ちに気付かなかったことに対して言っているのか、お金を盗んだフロラを許してしまうことを皮肉っているのかは謎ですが…。

エリザベス・ラッセル

エリザベス・ラッセルの隠しごとは次の2つでした。

エリザベス・ラッセルの隠しごと
  • チャールズ・ケントという息子がいたこと
  • 離れ家でケントに会っていたこと

ラッセルの行動や言動は直接アリバイ工作に関わっていないですが、同時に怪しい行動を起こして推理を惑わす役割を持っています。実際、ジェームズ・シェパードの診療所に行って話を聞いたことや、銀卓の蓋を閉めたことは、「何かあるな…」と匂わせるには十分な行動ですからね。

それにしても、育ててあげられなかった後悔の念があるとはいえ、ラッセルは子供思いの良い母親です。懸命に頑張っている母親は強い。ぜひケントが更生して、いっしょに過ごせなかった日々を取り返すくらいの幸せな親子になってほしいですね。

アーシュラ・ボーン

アーシュラ・ボーンもポアロから何も言われていないものの、嘘の新聞につられて2つの隠しごとを明かしました。

アーシュラ・ボーンの隠しごと
  • ラルフと結婚していたこと
  • 離れ家でラルフと密会していたこと

結果的にはラッセルと同様に推理を惑わす行動でしたが、アーシュラは途中までかなり怪しまれていた人物。それは、「21時45分~22時までのアリバイが1人だけないこと」や「ロジャーから暇を出されたこと」などの状況証拠がそろっていたからです。

これらの行動の根源はラルフにあるわけですが、彼の状況をますます悪いものにしてしまいました。ジェームズ・シェパードもこんなことを言っています。

ラルフにとって不利な事実が次から次へと出てくるので、私はびっくりしてしまった。

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『アクロイド殺し(22 アーシュラ・ボーン)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

自分が願っている状況になって、内心はほくそ笑んでいたのかもしれませんが…。

ジェームズ・シェパード

さすがにジェームズ・シェパードは隠しごとだらけでした。細かい行動の意図は後述しますが、大きく分けると次の3つでしょうか。

ジェームズ・シェパードの隠しごと
  • ファラーズ夫人をゆすっていたこと
  • ロジャー・アクロイドを亡き者にしたこと
  • ラルフ・ペイトンを診療所に送ったこと

1つ目は直接の動機、2つ目は言わずもがな、3つ目は自分の代わりを務める人物。言えるわけがありませんね。

基本正直に答えるか自分の考えを提案していたジェームズでしたが、嘘もいくつか言っていました。例えば、次の証言です。

一年前に、遺産を相続しましてね―夢を実現させることができるほどの金額だったんです

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『アクロイド殺し(3 カボチャをつくる男)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

ファラーズ夫人から奪ったお金の言い訳であり、さほど大きな嘘ではありません。しかし、言葉を巧みに使って事実を重視した手記だったので、もったいないかなという気がします。キャロラインが聞いたら一発でわかってしまうことですしね。

アリバイトリックについて

それでは、アリバイトリックについての振り返りと考察を行います。まずは、ジェームズの行動です。

アリバイトリックの流れ
  1. 窓を開けておく
  2. ロジャーを亡き者にする
  3. 21時半にロジャーの声が出るように録音機をセットして安楽椅子を動かす
  4. 玄関を出る
  5. 離れ家に行ってラルフの靴に履き替える
  6. ぬかるみを歩き窓敷居に足跡をつける
  7. 書斎に入って内側からドアにカギをかける
  8. 離れ家に戻って自分の靴に履き替える
  9. 門番小屋の前を通って家へ帰る
  10. 駅から患者に頼んでいた電話をかけてもらう
  11. パーカーといっしょに書斎のドアを壊して中に入る
  12. パーカーに警察、レイモンド、ブラントを呼んでくるよう言いつける
  13. 録音機を鞄にしまい安楽椅子を元の位置に戻す

これらの行動について、ジェームズは手記中に意味深な表現(本人は「巧妙」「慎重」と表現)で記述しています。

私はドアの取っ手に手をかけたまま、ちょっとためらって振り返り、何かやり残したことはないかと考えた。何も思いつかない。私は首を振って部屋を出て、ドアを閉めた。

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『アクロイド殺し(4 ファンリー荘の晩餐)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

「何かやり残したことはないかと考えた」とは、「アリバイトリックの事前準備は問題ないか」ということ。実際に行った準備は、録音機をセットして安楽椅子を動かしたことでした。

しておかなければならないことがいくつかあったので、私はそれをかたづけた。

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『アクロイド殺し(5 殺人)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

この表現の裏には、録音機を鞄にしまって安楽椅子を元の位置に戻す行動が隠されています。しかし何も知らずに読んでいれば、「医者だしみんなが集まる前に何かやっておかなくちゃいけないのかな」と思っても仕方ない表現です。

そしてポアロは、以下の3つの事柄からジェームズが怪しいと推理します。

  • 窓が開いていると証言したのはジェームズだけだったこと
  • 玄関を出てから門番小屋の前を通るまで10分かかっていたこと(上記流れの4~9)
  • ロジャー発見のときに居合わせるため電話が必要だったこと

これが今回使用されたアリバイトリックの全容でした。

では、ここからアリバイトリックの考察に移ります。整理のため、9/17(木)の行動をまとめた次の表を見てみましょう(パソコンの場合は画像をクリックして拡大し左右ボタンでスライド、スマホの場合はピンチアウトしてご覧ください)。

アリバイ表1
アリバイ表2
アリバイ表3

ここで注目すべきは21時半のアリバイ。ジェームズ自身に嫌疑がかからないようにするためには、21時半にセットした録音機の声を誰かに聞かせなければなりません。これが必須の条件です。

しかしレイモンドは仕事のことでたまたま書斎に行き、ブラントも偶然テラスに行っただけ。つまり、21時半にロジャーが生きていることを確認させるのは運頼みになってしまっているのです。このことは、今回使用したアリバイトリックの盲点と言えるのではないでしょうか。

次に、アリバイトリックを使用しなかった場合を考えてみます。その場合、ロジャーが発見されるのはおそらく朝になるでしょう。真っ先に疑われるのは、最後にロジャーと話をしたジェームズのはずです。だからこそ、アリバイトリックが必要になりました。

しかし、ジェームズが書斎を出た後のアリバイはみんな曖昧。結果論ですが、もしかしたらアリバイ工作をしなかった方が、逆に混沌として真実にたどり着けなかった可能性もあります。もちろんジェームズは、ものすごい不安に包まれるでしょうが…。

それにしても、わずか1時間弱の間に3組(ジェームズ、ラッセル&ケント、アーシュラ&ラルフ)が離れ家を使用。「よく鉢合わせしなかったなぁ」と考えちゃいますね。

ポアロの抱えた想い

あくまで想像ですが、ポアロはジェームズというヘイスティングズとどこか似た人物に会って、新しい土地でも「楽しくやっていけそうだな」と考えていたのではないでしょうか。そんな気持ちは、次の言葉に現れていると思います。

遠く離れたところにいる友人に、いろんな点で似ている方とお近づきになれたんですからね。

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『アクロイド殺し(3 カボチャをつくる男)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

シェパード先生、あなたはわたしの友人ヘイスティングズの代りに、神様がよこしてくださった人に違いありません

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『アクロイド殺し(8 ラグラン警部の確信)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

もう一度、ヘイスティングズのような人といっしょに推理できる喜びがにじみ出ていませんか?だからこそ、事実が明らかになっていくにつれてポアロは辛くなっていった。ポアロはこんなことまで言っています。

あえて申しますが―わたしは、あれが、パーカーであってくれればいいと思っているのですよ

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『アクロイド殺し(17 パーカー)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

このころからジェームズが怪しいと感じていたのでしょう。だけどそれを否定したかった。

そう考えながら物語を読み進めていくと、ポアロに感情移入してしまい切なさが込み上げてきます。「せっかく新しい土地で楽しく過ごせると思ったのに、こんな結末になるとはなぁ…」と。

回収してない伏線

ほとんど回収されている伏線ですが、1つだけわからないことがありました。それは、キャロラインが女詐欺師について語った次の言葉です。

それほど遠くないところに、そういう人がいたのを憶い出したものだから

出典元:ハヤカワ・ミステリ文庫『アクロイド殺し(17 パーカー)』アガサ・クリスティー/田村隆一訳

「胡散臭い」と表現しているラッセルのことを指しているのか。それとも、セシルやフロラなどほかの関係者や、単に村人の誰かを指しているのか。深読みすれば自分自身と捉えることもできます。

最後まで具体名が出なかったので、このことが唯一残った謎です。個人的には、「ジェームズに対する愛情をひた隠しにしている自分自身」を、詐欺師と表現したのではと思っています。ちょっとロマンがあり過ぎですかね。

もしこの謎についてわかる方がいれば、教えていただけるとありがたいです。

読んでみた感想

これだけの入り組んだ事件を解決してしまうポアロは、引退したとはいえ全然衰えてないと感じました。特に、次の別々に分かれていた行動をすべて解き明かしたのは、さすがとしか言いようがありません。

  • シェパードの行動
  • ラッセルとケントの密会
  • アーシュラとラルフの密会

何か怪しい行動があったら、すべてを1つにつなげてしまいがちです。しかし今回の物語は、まったく関係ない行動を別々に解読しなければならない難しさがありました。何気ないことにもちゃんと意味があり、ひとつひとつをしっかりと理解していかなくてはならない。現実世界でも非常に重要なことではないでしょうか。

また、最後の章でシェパードは「キャロラインは私を愛している」と言っていました。しかし、シェパードもまた、キャロラインを愛していたんだろうと思います。だから彼は、長期的に見て姉のためになるいちばんよい方法を選んだ。そして、行動をともにしていくにつれて徐々に好きになっていったポアロに、すべてを託したのではないでしょうか。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。

その他のポアロ作品のネタバレ解説はコチラから探せるので、良かったらご参照ください。