鬼畜(松本清張の小説)のあらすじ・ネタバレ結末・感想・考察

鬼畜(松本清張の小説)のあらすじ・ネタバレ結末・感想・考察

松本清張の小説『鬼畜』。この物語は、真面目に生きてきた男が他に女を作り、妻に知られてどうしようもない状況に陥っていく短編小説です。

そこでこのページでは、結末など本作品のネタバレ解説を行いました。一部ネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

登場人物

本作品の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
竹中宗吉 印刷屋の主人
お梅 宗吉の妻
菊代 宗吉の愛人、鳥鍋料理「ちどり」の女中・お春
石田 外交員
利一 菊代の1人目の子供
良子 菊代の2人目の子供
庄二 菊代の3人目の子供

あらすじ

ラベルのような精密な印刷がうまい竹中宗吉は、同じ家で住み込みだったお梅と逃げ夫婦になった。そらからも各地を転々とする生活を続けたが、32歳の時に自分の印刷屋を持つに至る。

仕事が軌道に乗り出したある日、宗吉は外交官の石田の接待で「ちどり」という店に行き菊代を知る。やがて関係を持ち、面倒を見る約束をして、お梅に知られることなく8年が経過した。

汽車で1時間のところに家を買ってやり、利一、良子、庄二と3人の子供もできる。しかし不運もあって印刷所が凋落し、菊代に生活費が払えなくなった。

責苦を逃れるため次第に訪れなくなっていたある夏の日、菊代が子供を連れて家に乗り込んでくる。汽車がなくなったので菊代は泊まることとなったが、お梅の蚊の復しゅうに耐え兼ね子供を置いて帰ってしまった。

翌日、子供たちを連れて菊代の家に行くも、彼女は故郷に帰ってもぬけの殻。仕方なく帰宅した宗吉は、行く場のない子供たちの世話をすることになるのだが…。

ネタバレ

それでは、本作品の結末までのストーリーです。

結末まで

お梅は3人の子供に異常なほどの憎しみを抱きました。やがて庄二が栄養失調で寝込むようになり、ある日、毛布が顔の上にかかり落命。お梅の仕業という証拠はなかったものの、毛布は庄二の顔に落ちるには不自然な位置に元々ありました。

続いて良子。お梅に実行を迫られた宗吉は、良子を東京に連れて行き屋上の動物園に置き去りにします。

最後はお梅が最も憎んでいた利一。宗吉はお梅に渡された青酸カリを饅頭やモナカに入れるも、味覚が鋭敏な利一は口にしませんでした。続いてボートの転覆を目論むも、これも失敗。最終的に伊豆の西海岸に行き、眠ってしまった利一を断崖から放りました。

しかし利一は松に引っかかって生存。助けられた利一は宗吉に関することは言いませんでしたが、持っていた石板用の石からラベルが判別され警察の捜査が始まりました。

3種の鬼畜

本作品のメインの登場人物である宗吉、お梅、菊代は、3人がそれぞれ別の形の鬼畜だと思います。

  • 宗吉:現実から逃げ続けている
  • お梅:子供の存在を消すのを厭わない非道さがあり陰湿
  • 菊代:子供を平気で捨てる

宗吉のことを補足すると、菊代との関係がどうにかなると思い続けた無計画な希望。生活費が払えなくなると菊代のもとを訪れなくなった責任感の欠如。この点は定かではないですが、終いには自分の子供ではないと言い聞かせ、お梅の非道な命令も厭わなくなりました。すべて現実逃避から来る行ないです。

感想・考察

余白がたくさんあるというか、様々な思惑が考えられる物語だと思いました。作中でもっとも触れられているのは、利一、良子、庄二が宗吉の子供だったのかということ。宗吉が現実逃避でただそう思いたくなかったのか、またはやはり菊代が別の男と作った子だったのか。もし石田との子であれば、宗吉を菊代に会わせたところから計画は始まっていたわけです。

なぜお梅は子供たちに異常ともいえる憎しみを抱いたのか。それはやはり宗吉との間に子供が欲しかったのではないでしょうか。それくらい実は宗吉を好いていた。しかし別の女と子供を作っていたと知り、愛情が歪んで子供たちへの憎しみに変化したのだと思いました。

最後に漁夫や警察に事情を聞かれても、利一は何も言いませんでした。おそらく菊代に捨てられたことに深く傷ついており、宗吉にはそうされたくなかったのだと思います。それが庇うという形で現れたのでしょう。大人たちの身勝手が色濃い物語ですが、子供たちが本当に可哀そうでなりません。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。

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