地方紙を買う女(松本清張の小説)のあらすじ・ネタバレ結末・感想

地方紙を買う女(松本清張の小説)のあらすじ・ネタバレ結末・感想

松本清張の小説『地方紙を買う女』。この物語は、東京に住む女がわざわざ地方紙を購読する理由に迫る短編小説です。

そこでこのページでは、なぜ地方紙を購読したかなど本作品のネタバレ解説を行いました。一部ネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。

登場人物

『地方紙を買う女』の登場人物は以下です。

登場人物名 説明
潮田芳子 バー・ルビコンの女給
杉本隆治 作家
庄田咲次 某デパートの警備課員
福田梅子 某デパートの店員
田坂ふじ子 雑誌の編集者

あらすじ

2月21日、東京に住む潮田芳子が、K市で有力な地方紙「甲信新聞」の購読を申し込む。連載中の小説「野党怪奇」に興味があり、19日付けからの新聞を送るよう手紙をしたためた。

購読から15日目、「野党怪奇」の作者である杉本隆治から感謝のハガキが届く。そして1か月近く過ぎ、臨雲峡で男女の心中遺体が発見された記事を読んで芳子は新聞の購読をやめた。小説がつまらなくなったと理由を書いて。

不愉快になった杉本はふと潮田芳子に疑問を覚える。もしかしたら小説は購読の理由を作りたかっただけで、本当は新聞で別の何かを探していたのではないか。

杉本は芳子が購読していた分の新聞を読み、男女の心中の記事に目をつける。芳子はこの2人を知っていたのではと考え、独自に調査を始めた。

ネタバレ

それでは、本作品の結末およびなぜ地方紙を買ったのかを解説いたします。

結末まで

杉本は私立探偵に調査を依頼し、芳子と庄田が情人関係であること、芳子が心中に関係していることを確信。バー・ルビコンに赴いて芳子を指名し、次の方法で揺さぶります。

  • 大臣の演説写真を見せる
  • 庄田咲次と福田梅子と同じ服を着た2人の写真を見せる

杉本に疑いを持った芳子は、もう1人女性を呼んでもらい3人で伊豆に旅行。誰もいない山林で昼食をとり、心中に見せかけて杉本と連れの田坂ふじ子の命を奪おうとしました。

ところが杉本にそれを阻止されたため、芳子は毒が入っていると言われたお寿司を食べます。何事も起きず芳子は帰宅しましたが、後日杉本に遺書を送付。毒はお寿司ではなくジュースに入っていたのです。

なぜ地方紙を買ったのか

芳子が地方紙を購読した理由は、自分が命を奪った庄田と福田の遺体がどのように扱われるか知りたかったから。いわば下手人が現場に戻ってくる心理と同じで、それを新聞で代用したのです。

しかし芳子は以下2つのミスをしてしまいました。

  • 「野党怪奇」が読みたいと理由をつけてしまった
  • 19日付けから欲しいと依頼した

この2点で芳子は杉本に疑問を持たれ、凶行が18日に起こったことだと推定させてしまったのです。

庄田の命を奪った動機は、身体を強要されお金までも奪われていたから。偶然買い物袋に入っただけのことでしたが、万引き女という弱みを握られていたのです。

感想・考察

余計なことが仇となる面白さがありました。「野党怪奇」が面白いとさえ書かなければ、もしかしたら万事うまくいっていたかもしれないからです。ただ理由もなく東京に住む人物が、急に地方紙を買うと変に思われるだろうという心理もわからなくありません。

これもたらればですが、芳子の夫の出兵がなかったらとは思いました。もし一緒にいられたら芳子が外で働くこともなく、デパートで庄田に目をつけられる可能性もなかっただろうからです。間接的ではありますが、芳子は夫の出兵により悲劇に見舞われた1人と言えます。

1つ疑問だったのは、芳子が庄田と福田の命を奪ったおはぎを片付けて帰ったこと。心中であれば、その場に形跡を残しておくべきだったのではないでしょうか。特に触れられず心中で片付いていましたが、第三者の関与が疑われる一要因になっていたかもと思います。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。

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