ハロウィーンパーティ(ポワロ)のネタバレ解説・あらすじ・相関図・感想
アガサ・クリスティのミステリー小説『ハロウィーン・パーティ』。この物語は、人が命を奪う現場を見たと話した少女がハロウィーンパーティで亡き者にされる、ポアロシリーズの長編小説第三十一作目です。
そこでこのページでは、「人物相関図」や「物語のポイント」を確認しながら、本作品の解説と考察を行います。すべてネタバレになりますので、「まだ読んでない」という方は十分にご注意ください。
物語について
解説の前に、最終的な人物相関図とあらすじをざっとおさらいしておきます。「そんなの必要ないよ」という方は読み飛ばしちゃってください。
最終的な人物相関図
以下は、本作品の登場人物の最終的な相関図です。パソコンの場合は画像をクリックして拡大、スマホの場合はピンチアウトしてご覧ください。
あらすじ
◆ ハロウィーン・パーティの悲劇
オリヴァ夫人が手伝いに来たハロウィーン・パーティの準備で、人が命を奪った場面を見たと子どもの1人のジョイスが言い出す。ジョイスは日ごろから注目を集めるためにウソをついていたため、誰もその話を信じようとしなかった。
パーティは大成功でお開きになったが、片付けの最中に図書室で遺体が発見される。1人で帰ったと思われたジョイスが、水の入ったバケツに頭を押し込まれ息絶えていたのである。
◆ ポアロの捜査開始
ジョイスの話が本当のように思えてきたオリヴァ夫人はポアロに相談する。そして偶然にも同じ町で隠遁生活を送っていたスペンス元警視に、ポアロは協力をお願いした。
続けてパーティがあった家のドレイク夫人、ジョイスの家族、スペンスの妹のエルスペスに意見を聞く。共通していたのは、ジョイスはやはりウソつきで誰もパーティのときの話を信じていないことだった。
◆ 現在と過去
ジョイスの話が何を指しているか確かめるため、ポアロは近くで起こった過去の悲劇に目を向ける。特に目を引いたのは大金持ちのルウェリン・スマイスがオ・ペール娘のオルガ・セミノフに遺産を残したのだが、オルガは遺言補足書を偽造したと疑われ急に失踪したという一件だった。
ポアロが過去も含めた聞き込みをする一方で、オリヴァ夫人はルウェリンに関する新事実を手に入れる。ルウェリンはオルガに遺産を残す遺言補足書を本当に書いており、それに署名をした人から話を聞いたのである。
◆ 狙われるミランダ
オルガがかつて偽造文書で捕まり刺されて命を落としたレズリー・フェリアと親しかったという話が浮上する。そんな中、黒幕をゆすりお金を得ていたジョイスの弟のレオポルドが命を奪われてしまった。
急を要する事態となったため、ポアロはオリヴァ夫人にジュディスとミランダを避難させるよう電報を打つ。ところが昼食のために入ったお店で、ある男にミランダがさらわれてしまう。
解説と考察
それでは本物語の解説と考察に移ります。
犯人と動機
ジョイスとレオポルドの命を奪ったのは、ロウィーナ・ドレイクとマイケル・ガーフィールドでした。話は過去、オルガ・セミノフの失踪にさかのぼります。オルガはロウィーナとマイケルに亡き者にされており、その遺体の運搬の現場をミランダが目撃していたのです。
ミランダはいちばんの仲良しだったジョイスにこの話を打ち明けます。そしてジョイスはオリヴァ夫人の気を引きたいがために、ミランダから聞いた話を自分が見たかのように話す。一方のロウィーナは誰かとはわからずも、見られたかもしれないと感じてはいました。それがパーティでジョイスだと勘違いし手にかけたのです。
ジョイスの命を奪う際、ロウィーナはバケツの水で濡れてしまいました。濡れる理由を作るため、水がかかるよう花瓶を落としホイッティカーに目撃されるよう一芝居打ったのです。濡れるはずのない人が濡れる。これがポアロにとって決定的な手掛かり、ロウィーナにとっては疑われる要因となってしまいました。
過去の悲劇の真実
一連の悲劇の根源はギリシャの島に庭園を造るというマイケルの夢。もともとマイケルはルウェリンの遺産相続人になることを狙っていましたが失敗に終わります。そこで目をつけたのが、姪のロウィーナでした。
病気の夫のことも重なり、ロウィーナは美男子のマイケルに狂い恋仲となります。2人の仲を知ったルウェリンは激怒し、遺言補足書で相続人をオルガに変更。オルガは自分に大金が入ると知り、結婚まで考えていたマイケルに遺言書のことを話してしまいました。
オルガが本当に相続できるかは不安要素だったため、マイケルはレズリー・フェリアに遺言補足書を偽造させ処分。これでオルガは偽造したと疑われ、失踪してもおかしくない状況に追い込みました。そしてロウィーナとともにオルガの命を奪い泉に隠したのですが、遺体を運んでいるところをミランダに目撃されてしまったのです。
ドラマ「名探偵ポワロ」について
デヴィッド・スーシェが主役を演じる海外ドラマ「名探偵ポワロ」では、2010年に本物語を放送しました。以下はキャストと、原作との主な相違点です。
キャスト
登場人物名 | 役者名 |
---|---|
エルキュール・ポワロ | デヴィッド・スーシェ |
アリアドニ・オリヴァ夫人 | ゾーイ・ワナメイカー |
ロウィーナ・ドレイク | デボラ・フィンドレイ |
マイケル・ガーフィールド | ジュリアン・リンド・タット |
ジュディス・バトラー | アメリア・ブルモア |
グッドボディ | パオラ・ディオニソティ |
コットレル牧師 | ティモシー・ウェスト |
ラグラン警部 | ポール・ソーンリー |
フラトン弁護士 | エリック・サイクス |
エリザベス・ウィチカー | フェネラ・ウーネガー |
フランシス・ドレイク | ジョージア・キング |
エドムンド・ドレイク | イアン・ハラード |
レイノルズ夫人 | ソフィー・トンプソン |
ミランダ・バトラー | メアリー・ヒギンズ |
ジョイス・レイノルズ | メイシー・ナイマン |
レオポルド・レイノルズ | リチャード・ブレイスリン |
ルイズ・ルウェリン・スマイス | フィリダ・ロー |
オルガ・セミノフ | ベラ・フィラトワ |
原作との主な違い
- 登場人物や人間関係
- ポワロが電車でマイケルと一緒になる
- オリヴァ夫人が風邪をひく
- グッドボディが3件の過去の悲劇を語る
- ポワロや町の人が教会へ行く
- ロウィーナが花瓶を落としたのを見たのがオリヴァ夫人
- オリヴァ夫人が遺言補足書の話を掃除の手伝いから聞かない
- ミランダがマイケルに呼び出されたのが夜
- ポワロがハロウィンのお話をする
黒幕を含め全体的な話の流れは原作通りです。異なるのは登場人物。スペンス元警視と妹のエルスペス、ジョイスの姉のアン、エムリン校長が出てこず、ドレイク家の娘のフランシスや息子のエドムンドが追加されています。また、レオポルドはジョイスの兄に変更となりました。
原作ではルウェリン・スマイスとロウィーナの夫の落命については深く触れていません。しかしドラマではこの2つの件もマイケルとロウィーナの凶行になっています。つまり町で起こった悲劇のほとんどが2人の仕業になっているわけです。
マイケルが設計した庭園のロケ地は、ベックリーパーク(Googleマップ)という場所。きれいに刈り込まれた樹木(トピアリー)が印象的でした。
感想
オオカミ少年のように、ジョイスの話は真実なのかもと思わせておいてミランダの目撃談だったというひねりが面白かったです。別の人の話でも真実は語っているので悲劇が発生する。加えてオリヴァ夫人が来なければ話はでてきませんでしたし、いくつもの偶然が重なるあたりクリスティらしい作風だと思いました。
本作の中で、オリヴァ夫人が小説の登場人物の作り方について語っています。面白いなと思ったのが、きっかけは実在する人間でもその人のいろんなことを知ってしまうと台無しになるという点。オリヴァ夫人はクリスティ本人がモデルだと言われているので、本当にこのような作り方をし苦悩があったのかもしれません。
スナップドラゴンは危ないんじゃないかと思いましたが、パーティでした遊びの描写は微笑ましかったです。それに小麦粉切りなんかは、砂場で同じような遊びをしたなと思い出しました。今はゲーム機などが発達しあまりしないかもしれませんが、このような遊びもたまにはいいのではないかと感じます。
少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。読んでいただき、ありがとうございました。
その他のポアロ作品のネタバレ解説はコチラから探せるので、良かったらご参照ください。
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